
「ノンバンクで借りるしかない…。」
そんな切羽詰まった状況に、今あなたはいるのかもしれません。
資金繰りが限界を迎え、公庫や銀行、信金にも断られ、「もう他に選択肢は残っていない」と感じていませんか?
たしかに、ノンバンク融資は高金利でリスクも大きく、安易に選ぶべきものではありません。
しかし、すべてを諦める前に、知っておくべきこと・まだできることがあるのです。
本記事では、ノンバンク融資を「意味ある一手」として使うための条件や注意点、そして本当に最後の一手となる前に検討してほしい資金調達策・改善策を、専門家の視点から整理してお伝えします。
あなたの判断が、後悔につながらないように。
この記事が、冷静な選択の助けになれば幸いです。
目次
1.ノンバンクを使うときは、すでに“非常事態”という通識を
ノンバンクの融資は、原則として「最終手段」です。
金利は年率10〜18%が一般的で、返済の見通しが不明確なまま利用すると、わずか数か月で資金繰りが崩壊してしまうこともあります。
でも、あなたがこのページを開いたのは、そんなことは百も承知で「それでも必要だ」と感じているからではないでしょうか?
その気持ちを否定するつもりはありません。
むしろ、そうした方にこそ、事実として注意喚起をしたいのです。
あなたがノンバンクを検討しているのは、「それでも支払いを止めたくない」「事業を止めたくない」と考えているからでしょう。
その気持ちは痛いほどわかります。
大切なのは、その判断が破滅への一歩にならないようにすること。
実際、次のような条件が揃っていれば、ノンバンクを意味のある一手として使うことも可能です。
・資金の使い道が明確である(給与・仕入など)
・返済原資が確定している(売掛金の入金日が明確など)
・借入期間が短期で済む(1〜2週間以内で返済できる)
たとえば、ある事業者は、売掛金の入金が5日遅れることが分かり、給与支払日と重なってしまいました。
取引停止や遅延リスクを避けるために、20万円だけノンバンクで借り、翌週には全額を返済。
このように、「資金の出入りが嫁いている状態」であれば、ノンバンクも適切に使うことができます。
ただし、この3つが曖昧なまま借りてしまうと、今ある“負担”を、さらに膨らませてしまうことになります。
※補足
ノンバンクとは、銀行のように預金や振込などの業務は行わず、貸付専門の金融業者を指します。
消費者金融やリース会社、信販会社などがこれに該当し、一般的に銀行より金利が高く、審査は早く通りやすいという特徴があります。
2.本当に「ノンバンクしかない」のか?再確認すべき3つの資金調達策
「もう他に頼れるところはない」と思い込んでいませんか?
ノンバンクを検討している方の多くが、実は十分に他の資金調達策を使い切っていないケースがあります。
一度断られた経験や、「自分の条件では通らないかもしれない」という思い込みが、可能性の扉を自ら閉じてしまっているのです。
ここでは、ノンバンクに進む前にもう一度だけ見直してほしい3つの選択肢を、具体的な制度とあわせてご紹介します。
「本当にダメだったのか?」を確認することで、新たな道が見えるかもしれません。
① 日本政策金融公庫:創業者・小規模事業者の味方
日本政策金融公庫の融資は真っ先に検討すべき手段です。
創業者や小規模事業者向けに設計された制度が充実しており、無担保・無保証で受けられる融資制度があります。
実際に、次のような理由で“諦めてしまっている人”が多くいます。
・「自己資金が少ないから無理」
→ 実際には自己資金要件はかなり柔軟化されています。
・「一度断られた経験がある」
→ 断られた理由を見直して、事業計画を修正すれば再挑戦で通るケースも多くあります。
② 信用金庫・地銀:3か所目で通るケースも
次に挙げたいのが、信用金庫や地方銀行です。
「地銀や信金にはもう相談した」という方でも、1ヵ所でダメでも3ヵ所目で通ったという事例は実際によくあります。
その理由は明確で、金融機関ごとに審査の方針や重視するポイントが違うからです。
さらには、支店や担当者が誰かによっても、対応の柔軟さに差が出ることがあります。
「前に断られたから、もう無理だろう」と思い込まず、少なくとも3ヵ所以上に相談することをおすすめします。
③ 専門家に相談する:一人で抱え込まず、突破口を見つけるために
資金調達に行き詰まったときこそ、「誰かに相談する」という行動が、新たな道を切り開くきっかけになります。
特に、税理士や中小企業診断士、認定支援機関などの専門家は、金融機関の評価ポイントや、過去に否決された理由の分析、改善方法の提案に長けています。
たとえば、融資が通らなかった理由を「事業計画が甘いから」とだけ言われても、どこをどう直せばいいのか分からないまま終わってしまうことも少なくありません。
そんな時、第三者の専門家が入ることで、次のような効果が期待できます。
・審査で見落とされやすいポイントの修正(数字の根拠、事業の再現性など)
・「なぜ通らなかったのか」を言語化し、改善の方向性を明確にする
・制度や地域に合った金融機関・補助金・融資の情報を紹介してもらえる
また、商工会議所や創業支援センターなどでも、無料で相談できる窓口が多数あります。
“専門家に相談する”という行動は、「あきらめの前にできる最後のひと押し」として、非常に有効です。
ここまでで、ノンバンク以外にもまだ検討すべき資金調達策があることをご紹介してきました。
それでも「すでに全部試した」「どうしても今すぐ必要だ」という方にとって、ノンバンクは現実的な選択肢のひとつとなります。
ただし、ノンバンクは“簡単に借りられる”からこそ、後から後悔する契約も非常に多いのが実情です。
次章では、ノンバンクを利用する前に必ず知っておきたい「契約の落とし穴」について、事前にチェックしておくべきポイントを整理していきます。
3.ノンバンクを使うならここに注意!契約前に確認すべき“落とし穴”
ノンバンク融資は、スピード感や審査の通りやすさが魅力ではありますが、その裏には高金利や不利な契約条件、隠れたリスクが潜んでいます。
勢いで申し込んでしまい、あとになって「こんなはずじゃなかった」と後悔する方も少なくありません。
ここでは、ノンバンクを利用する際に特に注意すべき2つのポイントを具体的に解説していきます。
「知ってさえいれば避けられた」リスクを、しっかり把握しておきましょう。
3-1.金利が高く、返済負担が大きくなる可能性が高い
ノンバンク融資は金利が高く、返済負担が大きくなりやすいため、開業直後には特に注意が必要です。
ノンバンク融資は「無担保・無保証」で借りられるケースが多い一方、その分金利も高く設定されがちです。
日本政策金融公庫の創業融資の金利が年利2.5%程であるのに対して、ノンバンク融資の金利は、年利10~18%が相場です。
比較してみるとその差は歴然です。
【比較例:100万円を1年で借りた場合】
借入先 | 金利 | 毎月の返済額 | 返済額総額 |
日本政策金融公庫 | 2.5% | 84,466円 | 1,013,587円 |
ノンバンク融資 | 18% | 91,680円 | 1,100,153円 |
※返済方式:元利均等返済の場合
資金繰りが逼迫している状況で、年利10%〜18%といった高金利のノンバンク融資に頼ることは、短期的な資金確保にはつながっても、中長期的には経営をさらに圧迫するリスクが高い選択と言えます。
なぜなら、すでにキャッシュフローが不安定な状態で高金利融資を受けると、毎月の返済に含まれる利息負担が想像以上に重くのしかかるからです。
たとえば、100万円を年利18%で1年間借りた場合、利息だけで10万円を超える支払が発生します。
これは、粗利率の低い業種にとっては1か月分以上の粗利が吹き飛ぶインパクトに相当します。
つまり、一時しのぎのつもりで受けた融資が、結果として事業全体の資金繰りをさらに悪化させる“負の連鎖”を生むリスクがあるのです。
「資金が足りないから借りる」この思考は間違っていませんが、借りる相手と条件を見誤れば、「借りたことが失敗だった」という事態にもなりかねません。
高金利のノンバンク融資を選択肢とする際は、返済原資と期間を明確にした上で、経営を立て直す“戦略的な一手”として位置づける必要があります。
3-2.将来の融資に悪影響を及ぼすリスクもある
ノンバンク融資は、スピーディに資金を確保できる手段として魅力的に映りますが、その選択が将来的な融資のチャンスを狭める可能性があることも理解しておく必要があります。
では、なぜビジネスローンの利用が、その後の融資審査に不利に働く可能性があるのでしょうか?
その理由は、金融機関が融資先を評価する際の見方にあります。
3-2-1. 「信用格付けを下げる行動」と見なされる可能性がある
ビジネスローンは、通常の銀行融資と比べて金利が高く、審査が緩やかな分、金融機関からは「本来の融資ルートが使えなかったのではないか」というネガティブな印象を与えてしまうことがあります。
そのため、金融機関の目には「信用力に不安がある」「経営状態が芳しくない」という評価に繋がってしまう恐れがあるのです。
3-2-2. ノンバンク融資の利用履歴で将来の融資審査までも不利に
ノンバンクを利用した過去があるだけで、金融機関の審査では「信用力に懸念のある企業」として評価される可能性があります。
現在の利用状況にかかわらず、「過去に利用していた」という事実だけで、資金繰りに不安のある会社だと見なされることがあるのです。
実際、金融機関は「なぜノンバンクを使ったのか」という背景事情を深く掘り下げることはほとんどありません。
それぞれに切実な事情があるとしても、審査の現場では、単純に「通常の融資が通らなかった会社」と一扱われてしまうのが現実です。
さらに、「一度使ったということは、再び使う可能性もある」と捉えられ、将来の融資に対して慎重な姿勢を取られることもあります。
4.ノンバンクに頼る前にできること“今すぐ実行できる”資金繰り対策
ノンバンクを使うべきかどうか。これは非常に重要な判断です。
しかし、そこに踏み切る前に、もう一段階できることが残されているかもしれません。
ここでは、ノンバンクを「最後の一手」にとどめるために、今すぐ実行できる資金繰りの改善策をご紹介します。
●手元の資金を増やすための「攻めと守りと見直し」
資金調達は「借りること」だけではありません。
手元資金を増やすには、入金を早める(攻め)・出金を遅らせる(守り)・支出そのものを減らす(見直し)いう3つの方向から同時に取り組む必要があります。
以下に、専門家として実際に提案している対策を紹介します。
✅ 売上を早く回収する(攻め)
「いつ入るか不確かな売掛金」を「確実な入金」に変えることが最優先です。
・売掛金の回収期日は早く
→既存の取引先の条件の変更が難しくとも、新規の取引先の条件から変えていくことはできます。
✅ 支払いを遅らせる(守り)
出金のタイミングを少しずらすだけで、手元資金の流れは大きく改善します。
・買掛金の支払期日は遅く
→既存の取引先の条件の変更が難しくとも、新規の取引先の条件から変えていくことはできます。
→税金・社会保険料の「猶予制度」を正式に申請する。
税務署や年金事務所は分納などの相談に乗ってくれる可能性があります。
✅ 固定費の削減も忘れずに(見直し)
毎月自動的に出ていくお金には、見直し余地があります。
・サブスクリプションや外注費、オフィス賃料を見直す
・使っていないリース・サービスを洗い出し、即解約
●それでも借入が必要なら「出口戦略を持ったノンバンク利用」を
もし、これらの対策を講じても資金が不足する場合は、ノンバンクの活用も現実的な選択肢です。
ただし、その際は以下の5点が最低限の条件です。
1.「いつ、どこから、いくら返すか」=出口戦略が明確であること
2.「資金ショートを回避するためのつなぎ」であること(短期利用)
3.公庫・信金・銀行の3か所以上に相談したか?
4.本当に他の選択肢は尽きたのか?
5.専門家に相談はしたのか?
5.まとめ:判断を焦らず、資金繰りの本質を見極めよう
ノンバンク融資は、経営者にとって“背に腹は代えられない”状況で選ばれる最後の資金調達手段です。
実際にノンバンクの力を借りて、倒産を回避した企業もあります。
しかしその一方で、高金利の返済負担が重くのしかかり、資金繰りをさらに悪化させてしまった例も少なくありません。
だからこそ、ノンバンクを検討する際は「ただ借りられるから使う」のではなく、“なぜそれが今必要なのか”、そして“どうやって返すのか”を明確にしたうえで判断することが極めて重要です。
この記事では以下の視点から、冷静な判断の材料をご提供してきました。
✅ 本記事で伝えた4つのポイント
1.ノンバンクは最終手段であり、条件が揃っていなければむしろ危険
2.他の資金調達策(公庫・信金・専門家相談)をもう一度洗い直す
3.借りずに済むよう、今すぐできる資金繰り対策を実行する
4.どうしても借りるなら、“出口戦略”を明確にして臨む
資金繰りに悩むと、冷静な判断をすることが難しくなります。
しかし、こういう時こそ、感情ではなく、「数字」と「計画」で動くことが経営者としての判断力です。
焦って借りる前に、できることをやり切る。
それでも借りるなら、必ず変えず筋道を描いてから。
そして一人で悩まず、信頼できる専門家に相談することを恐れないでください。
資金調達は、経営者が自らの未来を選ぶ「意思決定」です。
この記事が、あなたにとって“後悔しない一手”を選ぶための助けになれば幸いです。
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