経営力向上計画とは?メリットから認定までの流れを完全解説

経営計画を立てる男性

会社を経営しているなら、経営力向上計画の認定を受けておくべきです。

経営力向上計画には、次の3つのメリットがあります。

〇税金が安くなる【税制の優遇】
〇融資が有利になる【低金利・融資枠の追加、拡大】
〇補助金の審査が通りやすくなる【補助金の審査で有利になる】

今後事業を拡大していきたい経営者にとって、欠かせない制度と言っても過言ではありません。
しかし、あまり知られていないのが現実。

そこで今回は、経営力向上計画について、経営者が知っておくべきポイントにしぼって解説していきます。
是非、今後の事業拡大のための参考にしてください。


1.経営力向上計画とは

まずは、経営力向上計画の概要について確認しましょう。

1-1.概要

経営力向上計画とは、人材の育成や、コスト管理等のマネジメントの向上、設備投資など、自社の経営力を向上する計画のことです。
所定の計画書を作成し、国の認定を受けた事業者は、税金や金融の支援を受けることができるものです。

1-2.対象者

法人、個人事業主問わず、従業員が2,000人以下の事業者です。
ただし、税制措置や、金融支援によって対象となる規模要件が異なります。


2.経営力向上計画の主な3つのメリット

経営力向上計画は、国の認定を受けると主に次の3つのメリットを享受することができます。

2-1.税制の優遇

2-2.低金利融資・融資枠の追加、拡大

2-3.補助金の審査で有利になる

それぞれ解説していきます。

2-1.税制の優遇

経営力向上計画の認定を受けると、法人税や所得税、その他の税金が優遇されます。

主な優遇措置は、設備投資の際に、「即時償却」または「取得価額の10%(資本金3千万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除」を選択し適用することができるものです。
この制度を「中小企業経営強化税制」と言います。

(1)即時償却を選択した場合

即時償却とは、取得費用を全額、その年の経費として計上できる仕組みです。
通常は、設備の耐用年数に応じて分割して経費計上していく減価償却という方法が取られていますが、
経営力向上計画の認定を受け、即時償却をすることによって、利益が圧縮され、その年の法人税の負担を軽減することができます。
利益が多く出ている時には、大きな効果を感じることができます。
ただし、最終的な納税額は減価償却をした場合と変わりません。

(2)取得価額の10%(資本金3千万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除を選択した場合

税額控除とは、最終的な法人税の税額から直接差し引くことができる控除のことです。
例えば、800万円の機械装置を取得した場合、800万円×10%=80万円の税額控除を受けることができます。
経費計上は、通常通り耐用年数に応じて減価償却をしていきます。
そのため、最終的な納税額は少なくなります。

一般的には、税額控除を選択した方が有利です。
しかし、資金繰りの状況などによってどちらが有利か変わってきますので、どちらを選択すべきかについては専門家に相談するようにしましょう。

中小企業強化税制を利用するためには、いくつかの要件があります。
経営力向上計画の認定要件とは異なりますので注意が必要です。

■対象となる規模要件
・資本金又は出資金の額が1億円以下の法人
・資本金または出資金を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
・常時使用する従業員数が1,000人以下の個人
・協同組合等
■対象となる設備
・機械装置(160万円以上)
・工具(30万円以上)
・器具備品(30万円以上)
・建物付属設備(60万円以上)
・ソフトウェア(70万円以上)
■適用期間
平成29年4月1日~令和7年3月31日までの期間内に、経営力向上計画の認定を受け、対象となる設備を新規取得する必要があります。
※その他、設備の販売開始時期や用途等細かな要件があります。
詳しくは、専門家へ相談、または、中小企業庁「中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き」に記載がありますのでご参照ください。

中小企業庁.「中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き」https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/pdf/tebiki_zeiseikinyu.pdf(2023/10/27参照)

「中小企業経営強化税制」の他、「事業承継等に係る登録免許税・ 不動産取得税の特例」や、「中小企業事業再編投資損失準備金」の優遇があります。
詳しくは専門家に問い合わせるようにしてください。

2-2.低金利融資・融資枠の追加、拡大

経営力向上計画が認定された事業者は、低金利で融資を受けたり、通常の融資とは別枠での融資枠を確保することができます。

①日本政策金融公庫の低金利融資【新事業活動促進資金】

設備投資をする際に必要な資金について、低金利で融資を受けることができます。
令和5年10月時点では、設備資金の融資については、基準金利に対して-0.65%の金利が適用されています。

融資の条件は以下の通りです。(令和5年10月2日現在)

貸付限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)
貸付金利設備資金  特別金利B 1.45~2.55%(担保を不要とする場合)
運転資金  基準金利 2.10~3.20%(担保を不要とする場合)
貸付期間設備資金20年、長期運転資金7年以内(据置2年以内)

②銀行等民間の金融機関の融資(保証枠の追加・拡大)

銀行等民間の金融機関から融資を受ける際の、信用保証協会による信用保証を通常とは別枠で追加、または拡大することができます。
保証枠が追加、拡大される=融資が受けられる金額が増えると考えて問題ありません。

【保証限度額】

保証制度通常別枠
普通保険(担保有)2億円2億円
無担保保険(担保無)8,000万円8,000万円
特別小口保険(小規模事業者)2,000万円2,000万円
新事業開拓保険2億円→3億円(保証枠の拡大)
海外投資関係保険2億円→3億円(保証枠の拡大)

多くの方が、この融資枠の追加、拡大を目的に経営力向上計画の認定を受けています。
これらの他にも、海外での資金調達の支援や債務の保証制度などがあります。

2-3.補助金の審査で有利になる

経営力向上計画の認定を受けていると、補助金の審査の際に加点を受けることができます。
必ず採択されるというわけではありませんが、補助金の審査は加点形式で行われ、点数の多い事業者から採択されますので、有利になると言えます。

補助金の申請を検討している方は、経営力向上計画の認定が加点要因になるかチェックしておきましょう。
令和5年10月現在、経営力向上計画の認定で加点が行われる補助金は以下の2つです。

・小規模事業者持続化補助金
・事業継承・引継ぎ補助金

経営会議をする経営陣


3.経営力向上計画の認定までの流れ

経営力向上計画に認定されるためには、一連の申請手順を踏まなければなりません。

①経営力向上計画の下準備

経営力向上計画認定に際して、どの優遇措置を受けたいのか検討・決断しましょう。
経営力向上計画の認定において、この下準備の確認が重要になります。

受けたい優遇措置によって、要件等様々な制約があり複雑です。
経営力向上計画の認定を取りたいと考えたらまずは、専門家に相談することをおすすめします。

②経営力向上計画を作成する

実際に計画書を作成していきます。
経営力向上計画は、中小企業庁の定める事業分野別の指針に基づいた計画を作成しなければなりません。
ご自身で作成することもできますが、内容が複雑であるため専門家と一緒に作成することをおすすめします。
その他、申請に必要な書類も作成していきます。

③申請書類の提出

完成した申請書類を、事業分野に応じた大臣へ提出します。
事業分に応じて提出先が異なります。
提出方法は、郵送と電子申請のいずれかの方法で提出をします。

④審査

申請書類を基に審査が行われます。審査期間は、約30日くらいです。

⑤認定

経営力向上計画が認定されると、認定書が交付されます。


4.申請の時の注意点

魅力的な優遇措置が揃っている経営力向上計画ですが、注意点も存在します。
申請書を作成する前に、下記のポイントを押さえておきましょう。

4-1.申請から認定まで30日ほどかかる

申請から認定まで30日ほどかかります。
また書類に不備があればさらに日数がかかってしまいます。

設備投資をする場合は、設備の取得前に認定を受けることが必要になりますので、希望する期日までに優遇措置を受けたい場合は、時間に余裕をもって早めに申請手続きを行いましょう。

4-2.認定取り消しになる可能性もゼロではない

申請した計画を実施しなかった場合は、認定取り消しとなり優遇措置が受けられなくなる可能性があります。
立案した計画は確実に実施しましょう。

4-3.設備投資による税制優遇を受ける際に気をつけるポイント

設備投資による税制優遇を受ける場合、導入する設備等に条件が付与されています。
該当する設備の条件をしっかり確認してから購入しましょう。
たとえば、いかに高額であっても中古品は対象外です。


5.まとめ

いかがでしたでしょうか?
経営力向上計画は、認定されれば税制優遇や融資拡大等の魅力的な優遇措置が受けられる制度です。

主なメリットは次の3つです。

1.税制の優遇
2.低金利融資・融資枠の追加、拡大
3.補助金の審査で有利になる

今回は、経営者が知っておくべきポイントに絞って解説してきましたが、実際の申請では複雑な要件の確認や計画書の作成、煩雑な事務手続きが伴います。
また、審査も厳しく簡単に認定が受けられるものではありませんので、経営力向上計画の申請を検討した際は、専門家に相談することをおすすめします。

経営力向上計画は、今後事業を拡大していきたい経営者にとって、欠かせない制度と言えます。
是非、この機会に申請を検討してみてください。

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