【公庫×銀行の協調融資】融資の専門家がすすめない理由

【公庫×銀行の協調融資】融資の専門家がすすめない理由

融資の相談時に、「協調融資をご検討ください」と言われたことはありませんか?
一見、資金調達の選択肢が広がるように感じますが、実は注意が必要です。
本記事では、協調融資の基本から、なぜおすすめしないのか、そして専門家がすすめる現実的な進め方まで、わかりやすくご紹介します。


0. 協調融資とは?

協調融資とは、複数の金融機関が連携して、ひとつの事業者に対して共同で融資を行う仕組みのことです。
たとえば、日本政策金融公庫が1,000万円、地域の信用金庫が1,000万円をそれぞれ融資し、合計で2,000万円の資金を調達するといったケースが典型的です。

これは、1つの金融機関だけではリスクや融資枠の問題で、希望する融資額に対応できない場合などに活用される方法です。
1つの金融機関では対応が難しい高額な融資も、日本政策金融公庫と民間銀行が連携することで実現できる場合があります。
特に、創業時にまとまった資金が必要なときや、大規模な設備投資を行うタイミングでは、協調融資は有効な選択肢となり得ます。

また、協調融資を通じて公庫・銀行の両方と関係を築くことができれば、将来的な追加融資や経営支援など、資金調達面での選択肢が広がるという利点もあります。
このように、協調融資には一定のメリットがあることは事実です。

しかし、実務の現場においては、協調融資はできる限り避けたほうがよいと考える専門家も多く、私自身もその立場をとっています。
なぜなら、表面的には便利に見える協調融資には、見落とされがちなリスクや落とし穴がいくつも存在するからです。
特に、創業時の融資や資金繰りに余裕がない場面では、その影響がより深刻になりやすいのです。

次の章では、協調融資の注意点やデメリット、そしてなぜ専門家があえて推奨しないのかについて、詳しくご説明します。


1.協調融資の注意点とリスク─ なぜ専門家は協調融資を推奨しないのか ─

協調融資には一見メリットもありますが、実務の現場では、思わぬ落とし穴に悩まされるケースも少なくありません。
ここでは、専門家の視点から「なぜ協調融資を安易に選ぶべきではないのか」を詳しく解説していきます。

1-1.一方がダメなら、もう一方もダメになる?協調融資の落とし穴

協調融資では、関与するすべての金融機関が「承認」しなければ、融資が実行されません。
例え、日本政策金融公庫が500万円の融資にOKを出していたとしても、A銀行が否決とした場合、結果としてどちらからも借りられないという事態になってしまいます。

1-2.協調融資に失敗すると事実上、資金調達の道が閉ざされる

協調融資に失敗すると、再チャレンジは非常に困難です。
保証協会付き融資が否決された場合、たとえ別の銀行に申し込んでも、同じ結果になる可能性が極めて高いからです。
なぜなら、保証協会の審査結果は他の金融機関とも共有される仕組みになっているためです。

「では、プロパー融資ならどうか?」と思うかもしれませんが、プロパー融資(銀行が直接貸し付けを行う融資)は、創業間もない事業者にとっては非常にハードルが高く、実際にはなかなか利用できません。

つまり、保証協会付き融資が否決された場合、事実上、ほとんどの融資の道が閉ざされてしまうのです。
再チャレンジするには、否決の理由を改善したうえで、半年ほど期間を空けてから申込み直す必要があります。

保証協会付き融資について詳しくはこちら
▶保証協会付き融資とは?プロパー融資との違いを比較解説!

プロパー融資について詳しくはこちら
▶プロパー融資とは?信用保証協会付き融資との違いを比較解説!

1-3.スケジュールや手続きが煩雑になりやすい

協調融資は、2つの金融機関と並行してやり取りを進める必要があるため、手続きが複雑で時間もかかります。
金融機関ごとに提出書類や求められる情報が異なり、進行のスピードも揃わないことがよくあります。

設備の発注やスタッフの採用など、事業スケジュールと融資実行のタイミングが合わないことで、開業やプロジェクトの開始が遅れ、致命的なリスクとなる可能性があります。
このように、協調融資には「両方通らなければ借りられない」という構造的なリスクに加え、再申請のハードルの高さやスケジュール面での不確実性など、見落とされがちな落とし穴がいくつも存在します。

では、こうしたリスクを回避しながら、スムーズかつ着実に資金調達を進めるには、どのような方法がベストなのでしょうか?
次の章では、実務経験豊富な専門家がおすすめする「安全な資金調達の順番」を具体的にご紹介します。


2. 専門家が推奨する融資の進め方

はじめて融資を受ける際は、日本政策金融公庫の融資だけに絞って申し込むのが、安心で確実な進め方です。
その後、必要に応じて銀行への相談を検討するという順番が理想的です。

公庫の融資審査に通っていれば、その実績が信用力の証明となり、銀行での融資審査も通りやすくなるというメリットがあります。
仮に、公庫の審査に通らなかった場合でも、次の選択肢として「銀行の信用保証協会付き融資」を検討できます。
この際は、公庫での審査結果をふまえて、事業計画の内容や収支見込みを見直し、改善してから再チャレンジすることが可能です。

多少時間はかかるかもしれませんが、融資を完全に受けられなくなるリスクを回避でき、希望する資金を調達できる可能性も高まります。

 


3. 専門家直伝!融資成功率を高める3つの実践ポイント

融資の審査を通すためには、ただ事業計画書を作って申し込むだけでは不十分です。
申込金額の設定方法、金融機関との交渉の仕方、資金の流れの見せ方まで、戦略的に考えることが重要です。
ここでは、実務経験豊富な専門家だからこそ知っている「融資成功のポイント」を3つに絞ってご紹介します。

3-1.事業計画書は“見せ方”が命!申込額の設計もポイント

融資成功のカギを握るのは、事業計画書(創業計画書)の書き方と内容の見せ方です。
協調融資を検討する、銀行から協調融資を打診されたという場合は一般的に融資希望額が大きいことが考えられます。
複数の金融機関に申し込む場合は、各機関への融資希望額をどのように設定するかが非常に重要になります。

たとえば、
1つ目の金融機関(例:日本政策金融公庫)には、最低限のスタート資金のみで申し込む
2つ目の金融機関(例:信用金庫)には、公庫の融資決定後、不足分や運転資金を補う形で申し込む
という形に分けて進めることで、審査のハードルを下げつつ、トータルで必要な資金を確保しやすくなります。

ただし、こうした計画の設計には事業計画書の精度や、面談・交渉対応など専門的な対応力が求められるため、融資の専門家に相談することを強くおすすめします。

3-2. 1,000万円以上の資金が必要な場合は「分けて借りる」

公庫でも銀行でも、1,000万円を超える融資には慎重になる傾向があります。
そのため、一括で高額を申し込むのではなく、金融機関を2つに分けて合計額を達成するという方法が有効です。

たとえば、
1つ目の金融機関(例:日本政策金融公庫)には、設備資金700万円
2つ目の金融機関(例:信用金庫)には、運転資金300万円

といったように、一金融機関あたりの融資希望額を1,000万円以下に抑えることで、審査が通りやすくなる傾向があります。
このような分散戦略は、特に資金ニーズが大きい創業時や設備投資時に有効です。

3-3.公庫の融資入金口座は「次に融資相談する銀行」に設定

日本政策金融公庫自体には、預金口座の機能がないため、民間の金融機関(地方銀行や信用金庫)の事業用の口座に融資金が振り込まれる形になります。
このとき、次に融資を申し込もうと考えている銀行の口座を振込先に指定することで、次の融資審査にプラスの効果が期待できます。

これは、公庫から融資を受けたという実績を、次の金融機関に自然な形で伝えることができるうえに、
「この銀行を今後のメインバンクとして利用するつもりです」という意思表示にもなり、審査の印象が良くなる可能性があります。

このように、振込先の銀行口座を“戦略的に選ぶ”ことも、融資を有利に進めるポイントのひとつです。
事業用の銀行口座をまだ作成していない場合は、公庫の融資審査を通った証拠(融資契約書類など)を持参することで、銀行口座の開設もスムーズになります。


4.まとめ|協調融資は慎重に。確実な資金調達には“順番”と“戦略”が重要

協調融資は、一見すると資金調達の選択肢が広がる魅力的な方法に思えるかもしれません。
たしかに、1つの金融機関では対応が難しい高額融資も、公庫と銀行が連携し協調融資とすることで実現できる可能性があります。

しかし実際のところでは、「どちらか一方が否決すれば全体が失敗になる」「再チャレンジが難しくなる」「手続きが煩雑」など、協調融資には見落としがちなリスクが多く潜んでいます。
特に創業期や資金繰りに余裕のない場面では、その影響が大きくなります。

そのため、専門家の立場からは、まずは日本政策金融公庫の単独融資からスタートし、信用力を高めた上で銀行融資につなげていくという進め方を強くおすすめします。
融資は、正しい順序と計画で進めることで、失敗のリスクを減らしながら、希望する資金を確保することができます。
「協調融資を提案されたけれど不安がある」「自分にとって最適な融資の進め方がわからない」という方は、ぜひ早い段階で専門家に相談してみてください。
あなたの事業にとって最適な資金調達の道筋を、一緒に描いていきましょう。

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