日本政策金融公庫の創業融資の面談の際に、代表者個人の通帳を提出するよう案内があります。
「事業用で借入をするのに、なぜ個人の通帳まで提出しなければならないの?」
と疑問に思う方も少なくはありません。
中には、「正直あまり見られたくない。」と言う方もいるのではないでしょうか?
実は、代表者個人の通帳は、融資審査において重要な情報を読み取ることができる重要なアイテムなのです。
つまりは、代表者個人の通帳の中身を、融資審査で有利となる状態にしておくことで融資の成功確率は格段にアップするのです。
そこで今回は、なぜ通帳の提出が必要なのか、融資の担当は通帳の内容から何を読み取り、何を審査しているのか?について徹底解説していきます。
目次
1.なぜ通帳の提出が求められるのか?
結論、代表者が経営者としての素質を持っているかを確認しています。
経営者としての素質と言うと様々な見方がありますが、融資の審査においては、次の2点が重要視されます。
①経営者として起業に向けて計画を立て準備をしてきているか。
②経営者として計画的なお金の管理ができるか。
一般的な事業用融資の場合、法人であれば決算書、個人事業主であれば確定申告書などで事業の実績を示し、事業の状況などを踏まえて融資を行うか否かを判断します。
しかし、創業融資の場合は決算書や事業の実績がない状態で、日本政策金融公庫の担当者は融資の可否を判断しなければなりません。
そこで最も参考とするのが「創業計画書」ですが、これはあくまで「計画」であり、これだけでは代表者が、「お金を貸してきちんと返してくれる人」なのかどうかの判断は難しいです。
そこで、代表者個人の通帳の中身から、代表者の自身の計画性や普段からのお金の使い方をチェックし融資の審査の参考にしているのです。(※個人の通帳が複数ある場合、全て提出します。)
では、具体的にどのようなポイントをチェックしているのでしょうか?
次の章で詳しく解説していきます。
2.通帳でチェックされている2つのポイント
代表者個人の通帳からは、主に次の3点がチェックされています。
2-1.自己資金の有無、貯めた実績
2-2.代表者個人の日々の支払い状況
それぞれ詳しく解説していきます。
2-1.自己資金の有無、貯め方
まず、日本政策金融公庫の担当者は、代表者個人の通帳で自己資金の有無と、自己資金をどのように貯めてきたのかをチェックします。
自己資金は、審査において重要な判断材料です。
創業計画書に記載されている自己資金が実際にあるのか、事実確認をします。
さらに、その自己資金をいつ頃から、どのようにして貯めているのかも通帳の履歴からチェックしています。
この「いつ頃から」「どのようにして貯めているのか」で、前章で解説している、経営者としての素質「①経営者として起業に向けて計画を立て準備をしてきているか。」を図ることが出来るのです。
例えば、数年前から、毎月コツコツと一定の額を起業資金用として貯めている形跡が通帳に残っていることが最も理想的です。起業に対する、代表者の熱意を伝えることが出来ます。
※注意※見せ金はバレます!
「見せ金」とは、文字通り「見せるだけ」のお金のことです。
自己資金が少ないと融資審査で不利になることを理解した上で、親族や知人、カードローンなどで一時的にお金を借りて、あたかも自己資金があるように見せる行為です。
「見せ金」を用意する際には、どうしてもいきなり多額の金額が通帳に入金されることになります。
振込元が代表者本人以外の第三者であったり、振込元が不明な多額の入金は「見せ金」を疑われ、信用も失うことになります。「見せ金」は絶対にバレますので注意してください。
※親族等から贈与を受けたお金は、自己資金とすることが出来ます。
ただし、贈与であることが証明できるように、贈与契約書を作成し、かつ資金の移動は現金ではなく振込で行うようにしてください。※金融機関以外の親族や知人から、お金を借りる場合は自己資金として申告するのではなく、創業計画書の「親、兄弟、知人、友人等からの借入」の欄に、借入金額を記載して、申告をするようにします。さらに、借用書または金銭消費貸借契約書作成し資金の移動は現金ではなく振込で行うようにしてください。
2-2.代表者個人の日々の支払い状況
日本政策金融公庫の担当者は、代表者個人の通帳の内容から、日々の支払い状況をチェックしています。
事前に、日本政策金融公庫から提示された期間分の通帳を提出する必要があります。
事前に郵送で送られてくる、「お持ちいただく資料」の用紙に記載されていますので確認してください。
6カ月~1年分の通帳の提出を求められるケースが多いです。
具体的には、公共料金や家賃、携帯料金、車のローンや奨学金、クレジットカードの支払いなど、滞りなく支払いを行っているかを確認します。
これによって、前章で解説した経営者としての素質「②経営者として計画的なお金の管理ができるか。」を図ることが出来るのです。
たとえ代表者個人の生活費であったとしても、支払いが滞っていると、創業融資の返済も滞る可能性が高い「お金にルーズな人」とマイナスの評価を受けることとなります。
最低でも、創業融資を申し込む6カ月前からは、支払いの遅れなどが内容に注意しておきましょう。
※注意※通帳に「一括」や「合算」「合計記帳」などの記載はありませんか?
しばらく通帳の記帳を行っていないと、未記帳文の取引が、「一括」や「合算」「合計記帳」などとまとめて記載されてしまいます。
これでは、取引内容が確認できませんので、取引明細の提出が求められます。
「一括」や「合算」「合計記帳」などの記載がある場合は、銀行窓口で取引明細を発行してもらうことが出来ますので、事前に発行の手続きを行うようにしてください。
最近では、各種銀行アプリやネットバンキング等で取引明細を確認することができる場合もありますので、詳しくは各取引銀行へ問い合わせてください。オンライン上で発行した取引明細は、印刷をして持参するようにしてください。
※注意※通帳を発行していない場合はどうする?
ネット銀行を利用してたり、通帳を発行していないといったケースも増えています。
この場合は、アプリやネットバンキングから取引明細がダウンロードできますので、予め印刷をして持参するようにしてください。
3.理想的な通帳・NGな通帳
理想的な通帳と、NGな通帳の特徴を解説します。
3-1.理想的な通帳の特徴
①毎月一定額をコツコツと貯めている形跡がある。
給与が振り込まれる生活用の口座から、積立預金などの別口座に、毎月一定額が送金されている形跡があると最も理想的です。
②公共料金や家賃、携帯料金、車のローンや奨学金、クレジットカードなど滞りなく払っている。
普段からの計画性や資金管理能力が評価されます。
3-2.NGな通帳の特徴
①自己資金の出所がわからない
コツコツとためてきた形跡がなく、直近で多額の金額の入金などがある場合、「見せ金」が疑われマイナスの評価となります。
たんす預金で貯めてきたお金を入金したという方もいますが、残念ながらそれを証明する方法がありませんので、自己資金として評価はしてもらえません。
②公共料金や家賃、携帯料金、車のローンや奨学金、クレジットカードの支払いに遅れがある。
たとえ代表者個人のお金であっても、お金にルーズな人と評価されてしまいます。
以上が、理想的な通帳とNGな通帳の特徴です。
可能なかぎり、理想的な通帳の状態で創業融資を申込み、融資の成功確率をアップさせましょう。
4.家族の通帳は提出すべき!
家族分の通帳の提出の義務はありませんが、もし配偶者や子ども名義などで、毎月貯めているお金がある場合には提出した方が融資審査において有利になる可能性があります。
配偶者の収入がしっかりあるような場合も審査で有利になる可能性がありますので、協力が得られる場合は提出をするようにしましょう。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、日本政策金融公庫に提出する通帳にフォーカスを当てて解説をしてきました。
日本政策金融公庫の創業融資の審査において、代表者個人の通帳は創業融資の可否は判断する重要なアイテムです。
今回解説した、次の2つのチェックポイントを参考に、創業融資の審査で有利になる「理想的な通帳」の状態で融資の申込をするようにしましょう。
【通帳でチェックされている2つのポイント】
1.自己資金の有無、貯め方
2.代表者個人の日々の支払い状況
ただし、残念ながら通帳の内容は、今日明日で変えることはできません。
開業を決意したその日から、少なくとも創業融資を申し込む6カ月以上前から、融資の審査において理想的な通帳となるよう、計画的に準備を進めていくようにしましょう。
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