【事業者向け】つなぎ融資とは?資金調達の専門家が詳しく解説

【事業者向け】つなぎ融資とは?資金調達の専門家が詳しく解説

経営者の皆様へ、事業を営んでいると、急な資金不足に直面した経験はありませんか?

予期せぬ売上代金の回収遅れや、大型案件を受注した際の初期費用の支払いが発生すると、一時的に手元の資金が不足することがあります。そんな時に役立つのが「つなぎ融資」です。

一般的に「つなぎ融資」と聞くと、住宅ローンに関連する場合が多いですが、今回は事業用のつなぎ融資に焦点を当てて解説します。
事業用のつなぎ融資には、以下のようなメリットとデメリットがあります。

つなぎ融資のメリット

  • 事業の立て直しができる
  • 迅速な資金調達が可能
  • 補助金との併用で新たな事業にチャレンジ

つなぎ融資のデメリット

  • 金利が高い
  • 返済期間が短い
  • 一時的な対策に過ぎないこともある

詳しくは、本文で解説します。
この記事を読むことで、つなぎ融資の基本的な仕組みや、メリット・デメリット、具体的な活用方法について理解し、資金繰りの課題に迅速に対処できるようになります。

それでは、つなぎ融資の詳細について詳しく見ていきましょう。

最近では、新しい事業に挑戦する際に、「補助金」と「つなぎ融資」を組み合わせるケースが増えています。補助金は通常後払いであり、その間に必要な資金をつなぎ融資で調達するという方法です。

詳細については、以下の記事をご参照ください。
つなぎ融資で補助金申請の手元資金不足を解決する手法【完全解説】


1.つなぎ融資とは

つなぎ融資とは、経営において一時的な資金不足を補うための短期的な融資です。

事業を営んでいると、予期せぬ売上代金の回収遅れや大型案件を受注した際の初期費用の支払いが発生すると、一時的に手元の資金が不足することがあります。

例えば、製造業者が大口の取引先に商品を納品したものの、売上代金の回収が遅れ、手元資金が不足してしまうと、次の注文に必要な材料費を仕入れることが出来なくなり、事業が停滞してしまいます。
このような事態を避けるために、つなぎ融資を利用して材料費を確保します。

つなぎ融資は、これらのような一時的な資金不足に対応し、事業を円滑に進めるための重要な手段となります。


2.つなぎ融資の4つの特徴

つなぎ融資には、次の4つの特徴があります。

2-1.返済期間が短い
2-2.迅速な資金調達が可能
2-3.柔軟な資金使途に対応

2-4.金利が高め

それぞれ詳しく解説します。

2-1.返済期間が短い

つなぎ融資は短期間で返済が求められることが一般的です。
通常、数週間から数ヶ月以内に返済することを前提としています。
売上代金の回収が完了した日を返済期日とするケースもあります。

2-2.迅速な資金調達が可能

急な資金需要に対応するため、つなぎ融資は通常の融資よりも迅速に審査・実行されることが多いです。
これにより、事業運営の円滑化が図られます。

2-3.柔軟な資金使途に対応

つなぎ融資は、運転資金、設備投資、緊急の支出など、さまざまな用途に対応可能です。
最近では、新型コロナウイルスや自然災害等の被害を受けた事業者に対して、経営の回復・安定を図るために利用されることも多くなっています。

2-4.金利が高め

つなぎ融資は、利用する融資制度等にもよりますが、一般的に金利は高めに設定されることが多いです。
これは、貸し手側(銀行等の金融機関)が短期間で利益を得るための仕組みです。
また、借り手にとっても迅速に資金を調達できるメリットがあるため、その対価として高い金利が設定されることが多いです。


3.つなぎ融資のメリット・デメリット

つなぎ融資のメリット・デメリットは次の通りです。

メリットデメリット
・事業の立て直しができる
・迅速な資金調達が可能
・補助金との併用で新たな事業にチャレンジ
・金利が高い
・返済期間が短い
・一時的な対策に過ぎないこともある

それぞれ詳しく解説していきます。

3-1.つなぎ融資のメリット

●事業の立て直しができる
つなぎ融資の最大のメリットは、黒字倒産を防ぎ、事業の立て直しができることです。
黒字倒産とは、企業が利益を出しているにもかかわらず、手元の現金が不足して倒産することを指します。
これは、売上や利益があっても、売上の回収が遅れたり、大きな支払いが一度に発生したりして、資金繰りがうまくいかなくなることで起こります。

資金が集まれば売上が伸び、事業の立て直しができるケースは多いです。
資金繰りが悪化すると、返済に追われ、ビジネスを成長させるための投資が出来なくなり、悪循環に陥ることがあります。

つなぎ融資を受けることで、事業を立て直すことができる可能性が高まります。

●迅速な資金調達が可能
つなぎ融資は通常、他の融資よりも審査が迅速に行われ、短期間で資金を調達できます。
急な資金需要に対応するために非常に有効です。

●補助金との併用で新たな事業にチャレンジ
「補助金」と「融資」を組み合わせることで、新たな事業にチャレンジすることが可能になります。
補助金とは、国や自治体が企業や個人事業主の新事業の展開や販路拡大などにかかる費用の一部をお金を交付することで支援してくれる制度です。
補助金は、原則返済不要のもらえるお金ですが、後払いの制度であるため、実際に新たな事業を始めるための資金は、あらかじめ自分で用意しておく必要があります。

自己資金がないという方も、つなぎ融資を活用することで新たな事業にチャレンジすることができるようになります。

補助金とつなぎ融資の併用について詳しくはこちらの記事を参照してください。

つなぎ融資で補助金申請の手元資金不足を解決する手法【完全解説】

3-2.つなぎ融資のデメリット

・金利が高い
つなぎ融資は、利用する融資制度等にもよりますが、一般的な融資に比べると金利は高めに設定されることが多いです。

・返済期間が短い

短期間での返済が求められるため、返済計画をしっかり立てておかないと、かえって資金繰りが悪化するリスクがあります。

・一時的な対策に過ぎないこともある

つなぎ融資は一時的な資金不足を補うためのものであり、根本的な財務問題の解決にはならないことが多いです。なぜ、つなぎ融資が必要な状況に陥ってしまったのか、原因を究明し持続的な経営改善策をとる必要があるケースもあります。

売上の回収が遅れたことが原因なのであれば、取引先の信用調査を徹底したり、取引先を一社に依存しないようにするなどの対策を取る必要があります。
支払いと回収のサイクルが原因なのであれば、段階的な支払い(例えば、契約時に30%、納品時に70%)を導入するなど取引条件の見直しを検討する必要があります。


4.つなぎ融資を借りる5つの方法

つなぎ融資を借りる方法は、主に次の5つです。

融資実行までに
かかる時間
融資額
(調達可能額)の目安
金利
日本政策金融公庫1か月程度数百~数千万円2.5%~3%前後
信用金庫・銀行等1か月~1か月半数百~数千万円2.5%~3%前後
(保証料含む)
ビジネスローン最短即日数百万円3%~18%
ファクタリング最短1時間売掛金の総額まで手数料が発生する
契約形態よるが1~30%
不動産担保融資数週間~1か月程度
不動産評価額の60%~80%
2.5%~13%

それぞれ解説します。

4-1.日本政策金融公庫

融資実行までに
かかる時間
融資額
(調達可能額)の目安
金利
日本政策金融公庫1か月程度数百~数千万円2.5%~3%前後

日本政策金融公庫は、政府が運営する金融機関で、中小企業や個人事業主向けに融資を行っています。
日本政策金融公庫は、起業間もない事業者に対しても積極的に融資を行っており、どなたでも比較的利用しやすいのが特徴です。

つなぎ融資も取り扱っており、低金利かつ、長めの返済期間を設定することが可能です。
融資額の目安は利用する制度や、信用力にもよりますが、数百万円~数千万円程度です。
無担保・無保証人で融資が受けられる制度もあります。

融資の実行までは、最短で1か月程度かかります。
既に取引がある場合でも2週間程時間がかかりますので、早めに相談が必要になります。

資金調達に時間的な余裕がある場合は、まず日本政策金融公庫の利用を検討しましょう。

4-2.信用金庫や銀行

融資実行までに
かかる時間
融資額
(調達可能額)の目安
金利
信用金庫・銀行等1か月~1か月半数百~数千万円2.5%~3%前後
(保証料含む)

地域の信用金庫や銀行もつなぎ融資を提供しています。
地元密着型の信用金庫は、地域の中小企業を支援するための柔軟な対応が期待できます。
自治体の行っている制度融資を利用することで低金利で融資が受けられる可能性があります。
融資額の目安は利用する制度や、信用力にもよりますが、数百万円~数千万円程度です。
融資の実行までに、1か月半ほどかかる場合があります。
あらかじめ、事業用の口座を作成しておくなど、関係を持っておくと、迅速に対応してもらえる可能性があります。
資金調達に時間的な余裕がある場合は、日本政策金融公庫と併せて利用を検討しましょう。

4-3.ビジネスローン

融資実行までに
かかる時間
融資額
(調達可能額)の目安
金利
ビジネスローン最短即日数百万円3%~18%

ビジネスローンは、日本政策金融公庫や信用金庫、銀行よりも審査が柔軟で、最短で即日融資が実行される場合もあります。
融資額の目安は、数百万円、最大一千万円が上限とされています。
ただし、金利は3%~18%と高め設定されていることが多いため、返済計画をしっかり立てておかないと、かえって、資金繰りを悪化させてしまう可能性があります。
緊急性の高い場合以外の利用はおすすめしません。

4-4.ファクタリング

融資実行までに
かかる時間
融資額
(調達可能額)の目安
金利
ファクタリング最短1時間売掛金の総額まで手数料が発生する
契約形態よるが1~30%

ファクタリングは、売掛債権をファクタリング会社に売却して現金化する方法です。
売掛金の回収を待たずに資金を調達できるため、最短1時間など、迅速な資金調達が可能です。
売掛先の業績や信頼度を審査しているため、自社の業績に関係なく利用することができます。
ただし、1~30%程度のファクタリング手数料が発生します。(契約形態による)
また、調達可能額は、売掛金の総額までです。

ファクタリングの利用に依存してしまうと、業績が悪化する場合があります。
なぜなら、ファクタリングは高額な手数料が発生するため、実際の売掛金より少ない金額が入金されるためです。その分の利益が減少することになり、業績悪化の原因となります。

ファクタリングは、緊急性の高い場合以外の利用はおすすめしません。
ファクタリングについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。

資金調達の秘策!専門家監修ファクタリング完全ガイド

4-5.不動産担保融資

融資実行までに
かかる時間
融資額
(調達可能額)の目安
金利
不動産担保融資数週間~1か月程度

不動産評価額の60%~80%

2.5%~13%

不動産を担保にして資金を借りる方法です。
銀行等の金融機関やビジネスローンを扱うノンバンク等で取扱いがあります。
不動産資産がある場合に限り利用できます。

担保があるため、比較的高額な融資を受けやすくなっています。
融資限度額は、不動産評価額の60%~80%とされています。
金利については、借入金額に対して不動産の価値が高ければ、低金利での融資が期待できますが、
2.5%~13%と幅があります。

もし、返済できない場合は担保として提供した不動産を失うリスクがありますので注意してください。
融資実行までに数週間~約1か月程度かかるため、緊急時には向いていません。


5.つなぎ融資を成功させる!審査の3つのポイント

つなぎ融資には、もちろん審査があります。
今回は、日本政策金融公庫や信用金庫、銀行へつなぎ融資を申し込んだ場合の審査の3つのポイントを解説します。

審査における3つのポイントは次の通りです。

5-1.使い道、金額を明確にする
5-2.返済計画を明確に
5-3.契約書等の提出をする

それぞれ詳しく解説します。

5-1.使い道、金額を明確にする

審査において、資金の使い道と必要な金額を明確に示すことが重要です。
具体的に何にいくら使うのかを詳細に説明し、融資の必要性を納得させる必要があります。
例えば、仕入れ資金や人件費、広告費など、用途を明確にすることで信頼性が高まります。

5-2.返済計画を明確に

具体的に、いつ売上代金の回収ができるのか、いつ経営が安定して返済ができるのかを明確にし、綿密な返済計画を立てましょう。
資金繰り表を作成することをおすすめします。
簡易的な資金繰り表の作成方法はこちらの記事で解説しています。
【図解で解説】運転資金を融資で調達するための4つのコツを融資の専門家が伝授【コツその2.資金繰り表】

5-3.契約書等の提出をする

審査では、契約書や見積書などの関連書類の提出が求められます。
例えば、建設業の場合、工事受注明細や工程表など、具体的なプロジェクトの進捗状況を示すことが出来る資料が必要です。
これらの書類を準備し、前述した返済計画の根拠と返済原資が確保できることを証明することが重要です。


6.まとめ

つなぎ融資とは、急な資金不足に直面した時に役立つ短期的な融資です。
予期せぬ売上代金の回収遅れや大型案件の初期費用などに対応し、事業をスムーズに進めるための重要な手段です。

つなぎ融資を効果的に活用し、急な資金需要に対応することで、事業の安定と成長を図りましょう。
資金繰りの課題に対処し、持続的な経営改善を目指すために、つなぎ融資を上手に活用してください。

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