【介護事業向け】日本政策金融公庫の創業計画書の記入例~融資を成功させる書き方のポイント解説~

介護事業の経営者

審査に通る!事業の見通し(軌道に乗った後)ポイント介護事業で融資を受ける際の創業計画書の記入例を紹介していきます!

日本政策金融公庫の創業融資の申込に必要な創業計画書。
書き方がわからず、お困りの方も多いのではないでしょうか?

そこで本記事では、実際に専門家が審査を通してきた、実例を基に、創業計画書の書き方について解説していきます。
介護事業特有の、書き方をマスターし、融資の成功確率をアップさせましょう。


1.【介護事業向け】日本政策金融公庫の創業計画書の記入例

介護事業特有の創業計画書の書き方と記入例を紹介していきます。
日本政策金融公庫の創業計画書の全体像は下記の通りです。

【介護事業の創業計画書の記入例】

介護事業の創業計画書の記入例

このように創業計画書は、大きく8項目に分かれています。
各項目ごとに詳しく解説していきます。

日本政策金融公庫の創業計画書のダウンロードはこちら↓
創業計画書 (Excel)
創業計画書 (PDF)

1-1.【介護事業】創業の動機の記入

1.創業の動機の記入欄

創業を決意した理由を記入していきます。
自分自身の言葉で、創業に至った経緯や思いを第三者が見ても「実現可能だ」と思ってもらえるように記入していきます。

【創業の動機の記入例】

①15年の介護施設での勤務経験を通じて、現在の介護サービスに多くの問題点があることを痛感しました②特に、以前勤めていた施設ではカバーできなかった部分に対するケアの必要性を強く感じていいます③そんな中、同じ志を持つ仲間たちとの出会いがあり、共に介護サービスの質の向上を目指すべく、開業を決意しました④利用者一人ひとりのニーズに応じた室の高いケアを提供し、より良い介護サービスを提供していきたいです

審査に通る!創業の動機のポイント
・創業が一時の思いつきでなく、準備をしてきた結果であることをアピールしましょう。⇒記入例下線部①②
・創業するためのスキルが身についていることをアピールしましょう。⇒記入例下線部①②
・なぜ今のタイミングでの創業するのかを伝えましょう。⇒記入例下線部③
・創業することで実現したいことをアピールしましょう。⇒記入例下線部④
・記入欄に記入しきれない場合は、創業の動機の欄に「別紙参照」と記入し、別紙を添付しましょう。

1-2.【介護事業】経営者の略歴の記入【重要】

2.経営者の略歴等の記入欄

この欄には、介護事業に関連する経歴や資格等を記入していきます。
経営者の略歴は創業計画書の中で特に重要な項目です。
これまでの経歴や経験をこの欄でしっかりとアピールしていきましょう。

この項目はさらに(1)~(3)の3つに分かれていますので、それぞれ解説していきます。

(1)経営者の略歴等

2.経営者の略歴等の記入欄

これまでの職歴や身につけた技術等を記入します。
大学、専門学校などの卒業年度や勤務経験等を羅列してください。

【経営者の略歴等の記入例】

2.経営者の略歴等の記入例(介護事業者)

審査に通る!経営者の略歴のポイント
・経営者の略歴は、「創業の動機」の内容と矛盾がないようにしましょう。
介護業界に関係するようなアルバイトをしていたり、専門学校に通っていた場合は、学歴、アルバイトの経験についても書きましょう。
・経理、労務、マネジメント、管理業務などの知識や経験は経営者として必要なものですので、これらの経験があるとアピールになります。
・記入しきれない場合は、「経営者の略歴」の欄には「別紙参照」と記入し、別紙を添付しましょう。

(2)過去の事業経験

過去の事業経験の記入例

過去に経営の経験がある場合は、事業の内容を含め正直に記載しておきます。

審査に通る!過去の事業経験のポイント
・過去に事業を経営しており、仮に失敗してしまっていた場合も正直に記入しましょう。
 失敗してしまっていたとしても経営の経験は、あなたの経験であり、財産です。
・やめた理由については、面談で必ず聞かれますので正直に答えられるようにしてください。

(3)取得資格・知的財産権

取得資産、知的財産権等の記入例

資格は漏れなく記入します。
介護事業で開業するためには、法律や自治体の定める条例等で定められた、有資格者や要件を満たした職種の人員配置が義務づけられています。
経営者本人が、必ず資格を持っていなくても介護事業の運営はできますが、有資格者の離職などにより事業が継続できなくなってしまうリスクもあるため、経営者本人が資格を保有していることが望ましいです。

簿記は、経理・会計に関わる経営をする上で必要な知識ですので記入をしておくと評価に繋がります。
その他、介護報酬請求事務技能検定試験など、介護事務に係る資格等も保有していれば全て記入しましょう。

審査に通る!取得資格・知的財産権のポイント
・事業に関わる資格は漏れなく記入しましょう。
・一般的に知られていない資格でも記入して問題ありません。
・記入しきれない場合は、「別紙参照」と記入し、別紙を作成し添付してください。

1-3.【介護事業】取扱商品・サービスの記入

3.取扱商品・サービスの記入欄

この欄には、実際に提供する商品サービスや、セールスポイントを記入します。
この項目は(1)~(4)の4つに分かれています。
それぞれ解説してきます。

(1)取扱商品・サービスの内容

3.取扱商品・サービスの内容の記入欄

取扱商品・サービスを売上シェアの高いものから順に具体的に記入していきます。
売上シェアの割合も忘れず記入してください。

【(1)取扱商品・サービスの内容の記入例】

取扱商品・サービスの内容の記入例

審査に通る!取扱商品・サービスの内容のポイント
・専門用語は使わず、誰が見てもどのような商品、サービスなのかわかるように記入しましょう。
・記入しきれない場合は、「別紙参照」と記入し、別紙を作成し添付してください。

(2)セールスポイント

セールスポイントの記入欄

取扱商品・サービスのセールスポイントを記入していきます。
取扱商品・サービスの特徴や他社との差別化、なぜその商品・サービスに魅力があるのかを詳しく記入しましょう。

【(2)セールスポイントの記入例】

高齢者介護を中心に訪問介護サービスを提供します。以前勤めていた通所型介護事業者(社会福祉法人△△会 ○○デイサービスセンター)と連携することで、様々なニーズに対応することが出来ます。

審査に通る!取扱商品・サービスの内容のポイント
・介護事業の場合、サービス提供できるエリアが限られている為、人脈や地域とのつながりは強みになります。
 積極的にアピールしましょう。
・商品やサービスの魅力だけでなく、ご自身や企業としての強みを絡めて記入しましょう。

(3)販売ターゲット・販売戦略

販売ターゲット・販売戦略の記入欄

誰に、どのように販売するのか、どのように集客をするのかについて具体的に記入していきます。

【(3)販売ターゲット・販売戦略の記入例】

○○市にお住まいの要介護認定者○○○○名。以前勤めていた通所型介護事業者(社会福祉法人△△会 ○○デイサービスセンター)との連携による集客。ポスティング、ポータルサイトへの掲載。

審査に通る!販売ターゲット・販売戦略の内容のポイント

・次の4つ項目を整理して記入しましょう。
①「誰に」=年齢、性別、販売エリア、年収、業種、業界など
②「何を」=商品・サービスの概要
③「どのように販売するのか」=店頭販売、ネットショップ、訪問販売など
④「どのように集客するのか」=ネット広告、チラシ、SNS、DM、口コミなど

(4)競合・市場など企業を取り巻く状況

競合・市場など企業を取り巻く状況の記入欄

市場のニーズや事業に関連する政策の動向、競合他社の存在など、事業を取り巻く環境を説明します。
この事業が成功するための、十分な市場規模があることと、成長性があることを明らかにします。

審査に通る!競合・市場など企業を取り巻く状況のポイント
・介護事業の場合、サービス提供できるエリアが限られている為、開業する地域の介護を必要とする人口や競合を調べ、介護サービス需要があることをアピールしましょう。

1-4.【介護事業】取引先・取引関係等

4.取引先・取引関係等の記入欄

販売先や仕入れ先等を記載していく欄です。
(1)~(4)の項目に分かれていますので、それぞれ解説していきます。

 

(1)販売先

販売先の記入欄

販売先と、売上の回収条件を記載します。

 

【(1)販売先の記入例】

販売先の記入例

介護事業の場合、個人のお客様が対象になりますので、「一般個人」と記入します。
介護事業の場合、利用者様の自己負担分と介護保険分に分かれますので、それぞれ分けて記載しましょう。
シェアとは、全体の売上に対する割合のことです。

回収の条件は、売上が入金になるタイミングについて記載します。
介護事業の場合、介護保険分は、介護サービスの提供を行ってから入金までに2ヶ月程度かかります。

審査に通る!販売先のポイント
・一般個人と書く他に、ターゲットの特徴を書きましょう。
 どのような顧客をターゲットにしているのか第三者がイメージしやすくなります。
・過去の実績から既に顧客がいるのであれば、顧客リストを別途作成してアピールしてください。
・これから営業をかけていくのであれば、営業先リストを作成するようにしましょう。
・回収の条件については、介護事業特有の条件になりますので必ず把握しておきましょう。

(2)仕入先

仕入先の記入欄

消耗品などの仕入れ先が決まっていれば、記載します。

 

【(2)仕入先の記入例】

仕入先の記入例

審査に通る!仕入先のポイント
・事業の実現性を見られる箇所です。仕入先の目途はつけておきましょう。
・契約の締結までしている必要はありません。これから取引を検討している先も記入しましょう。
・支払いの条件については必ず確認しておきましょう。

(3)外注先

外注先の記入欄ヘルパーさんを社員ではなく、業務委託で確保している場合、外注先に記入をします。
特に外注を使う予定がない場合は「なし」と記入してください。

【(3)外注先の記入例】

外注先の記入例

審査に通る!外注先のポイント
・既に外注スタッフが決まっている場合は、個人名を記入するとより具体的で実現性が増します。
・複数名いる場合は、別紙を用意して一覧で提出するようにしましょう。

(4)人件費の支払い

人件費の支払の記入例

役員報酬、従業員の給与や賞与の支払い予定日を記入します。

1-5.【介護事業】従業員の記入

5.従業員の記入欄

3カ月以上継続雇用を予定している従業員数を記入します。

【従業員の記入例】

従業員の記入例

審査に通る!従業員のポイント
・業務量に応じて、本当に必要な人数を記入しましょう。
・ここでは人数を記入するだけですが、融資面談の際に、なぜその人数にしたのか、どのようなスキルを持った人材なのか、従業員の採用の目途は立っているのか、どのように募集をするのかを聞かれることがありますので、説明できるようにしてください。

1-6.【介護事業】お借入の状況の記入

6.お借入の状況の記入欄

代表者個人の借入について正直に記入します。
事前に借入の返済予定表を提出しますので、返済予定表を手元に用意して、借入の残高や年間の返済額を記入していきましょう。
手元にない場合は、ローン会社や金融機関に問い合わせると発行してもらうことができます。

【お借入の状況の記入例】

お借入の状況の記入例

審査に通る!お借入の状況のポイント
・隠したりせず、全て正直に記入しましょう。
 仮に嘘をついたとしても、日本政策金融公庫は個人の借入の状況を調べますので、必ずバレます。
 嘘をついていると、印象が悪くなり融資の審査に響きます。
・住宅、車、教育ローンは、延滞なく支払いをしていれば、審査において不利に働くことはほとんどありません。
・消費者金融からの借入や、カードローンは審査に影響しますので、なるべく完済してから創業融資の申込をするようにしましょう。
高齢の女性をケアする介護士

1-7.【介護事業】必要な資金と調達方法の記入【最重要】

「7.必要な資金と調達方法」の項目は、日本政策金融公庫が創業計画書の中で最も重視する項目です。
また、創業計画書を作成する上で、多くの方が書き方に悩む箇所でもあります。

まず、表全体の説明をします。
表の左側は、創業のために必要となる設備資金や運転資金について記入をする欄です。
表の右側は、創業のために必要な資金をどのように調達するのか、資金調達の方法について記入する欄になります。
最終的に、左側の創業のために必要な資金の合計と右側の調達方法の合計を一致させなければなりません。

7.必要な資金と調達方法の記入欄

まずは、「7.必要な資金と調達方法」の左側の欄の「必要な資金」(1)~(3)の記入方法から解説します。

必要な資金の記入欄について

(1)設備資金

手順1.必要な設備(モノ)の洗い出し
一旦、創業計画書を離れて、ノートやExcelのシートを用意しましょう。
そこに、創業するために必要な設備(モノ)を思いついた順に、物品名と金額を書き出します。
モレがないか確認しましょう。
今回は訪問介護事業所を例に作成していきます。

費目金額
法人設立費(合同会社の場合)11万円
指定申請費3万円
備品(机・椅子・パソコン・介護用品等)30万円
保証金20万円
合計64万円

手順2.金額が10万円以上のものをピックアップし創業計画書の設備資金の欄へ記入
一覧に出した必要な設備(モノ)のうち、単価10万円以上のものが、創業計画書の中で言う、「設備資金」になります。
創業計画書の設備資金の欄へ記入しましょう。

【設備資金の記入例】

設備資金の記入例

審査に通る!設備資金のポイント
・設備資金として創業計画書に記入したものは、見積書を添付資料として提出しましょう。
 見積書を提出することで、必要な資金の根拠が一目瞭然になりますので、融資の可否の判断材料になります。
 特に大きな金額のものほどシビアに見られます。
・見積書の発行が難しいものは、ネット通販の画面やカタログを印刷したものでも構いません。
・既に購入済みのものについても記入して構いません。
 購入済みの場合は、自己資金から支出していることになりますので、領収書のコピーを添付資料として提出します。
・介護事業所を賃貸する場合は、最低でも仮契約の状態が望ましいです。

(2)運転資金

運転資金とは、事業を続けていく上で、常に必要となる資金のことです。
人件費や、家賃、水道光熱費など、毎月コンスタントに支払いをしなければならない経費と考えてください。

次の手順に従って、記入していきます。

手順1.運転資金の洗い出し
設備資金を洗い出した時と同様に、一旦、創業計画書を離れてノートやExcelのシートを用意します。
下記の運転資金の例を参考に、1カ月の間に係る経費を思いついたものから、項目名と予想される金額を書き出していきます。

運転資金が全て洗い出せたら、1か月分の合計金額を算出します。

運転資金の例金額(1か月当たり)
人件費(役員報酬)25万円×1名25万円
人件費(正社員)25万円×2名50万円
人件費(パート)
 時給1,000円×4時間×25日=10万円×2名
20万円
外注費(ヘルパー)20万円×1名20万円
家賃10万円
水道光熱費3万円
通信費(電話・ネット代)2万円
広告宣伝費5万円
旅費交通費3万円
消耗品費2万円
支払い手数料5万円
合計145万円

手順2.創業計画書の運転資金の欄への記入
運転資金の目安は、月の経費の3ヵ月~6カ月分です。
事業が軌道に乗るまで、資金が不足しないように備えます。
特に介護事業の場合、保険診療分の売上の入金までに時間がかかるため、最初の約2ヶ月間は、どうしても赤字となってしまいます。
初回の売上入金までの間、資金が不足しないように備えなければなりません。

余裕を持って3~4カ月分は見積もって借入をすることをおすすめします。
1カ月分の経費×3~4カ月分の合計を運転資金の欄の上部に記入し、内訳の欄には次のように記入します。

【運転資金の記入例】

運転資金の記入例

審査に通る!運転資金のポイント
・運転資金の内訳は、事業がスタートした時を想定して、細かく見積もっておきましょう。
 実際に事業がスタートしてみると想定以上の支出があって困ったという声が多いです。
 また、融資面談の際に説明を求められる可能性がありますので、しっかりと想定しておきましょう。
・介護事業の場合、保険診療分の売上の入金まで約2ヶ月と時間がかかりますので資金に余裕を持たせるようにしましょう。

(3)必要な資金(設備資金と運転資金)の合計

設備資金の合計と運転資金の合計を足した金額を、創業のために必要な資金の合計を記入します。
以上で、創業計画書の「7.必要な資金と調達方法」の左側の欄「必要な資金」の欄の記入が完了です。

設備資金・運転資金の合計

次に、創業計画書の「7.必要な資金と調達方法」の右側の欄「調達方法」(4)~(8)の記入方法について解説していきます。

調達の方法の記入欄について

(4)自己資金

自己資金の記入例

創業のために用意してきた自己資金の金額を記載します。
※2024年度より、自己資金要件(創業資金総額の10分の1以上の自己資金があること)は撤廃されました。

審査に通る!自己資金のポイント
・2024年度より、自己資金要件は撤廃されましたが、創業資金総額の3分の1以上、自己資金が用意できていると審査では有利になります。
(創業資金総額が1,000万円の場合は自己資金300万円以上)
・自己資金が創業資金総額の3分の1に満たない場合には、店舗や設備を縮小し創業資金を抑えたり、創業の時期を見直すなどの検討が必要になります。
・通帳の履歴で、毎月の給与からコツコツと計画的に貯めてきたことを示せると経営者としての資質を高く評価してもらえます。
・見せ金は絶対にバレますのでやめてください。
 親族や友人から借りたお金は、次の項目の「親、兄弟、知人、友人等からの借入」の欄に記載してください。

(5)親、兄弟、知人、友人からの借入

親、兄弟、知人、友人からの借入の記入例

親族や知人からの借入がある場合は、誰からいくら借りたのか、返済額、返済回数、利率を記入します。

審査に通る!親、兄弟、知人、友人からの借入のポイント
・親や兄弟など親族からの借入でもきちんと「金銭消費賃貸借契約書」を作成して、返済期日などを取り決めておきましょう。
 融資審査の際に、「金銭消費賃貸借契約書」の提出を求められる場合があります。

(6)他の金融機関等からの借入

他の金融機関等からの借入の記入例

既に、他の銀行等から事業用の借入がある場合は、金融機関名、借入金額合計、月の返済額、返済回数、利率を記入します。

審査に通る!他の金融機関等からの借入のポイント
・返済予定表を用意して、添付しましょう。
・ビジネスローンなどを借りている場合も忘れずに記入しましょう。

(7)日本政策金融公庫、国民生活事業からの借入

日本政策金融公庫からの借入金額を記入していきます。
表の左側の必要な資金で算出した、(3)必要な資金の合計から、(4)自己資金、(5)親・兄弟・知人・友人からの借入、(6)他の金融機関からの借入の金額を引いて不足する金額を記入します。

これが、日本政策金融公庫へ借入を申し込む金額になります。

日本政策金融公庫、国民生活事業からの借入の記入欄

【日本政策金融公庫、国民生活事業からの借入の記入例】

日本政策金融公庫、国民生活事業からの借入の記入例

審査に通る!日本政策金融公庫、国民生活事業からの借入のポイント
・借入金額に対して自己資金の割合が高いほど、融資の審査において有利になります。
・借入金額は、自己資金の3倍を一つの目安としてください。
・借入金額が自己資金の8倍、9倍となってしまう場合は、創業にかける費用が大きすぎるか、自己資金が少ないということになります。
 店舗や設備を縮小し、創業資金を抑えるか、開業の時期を見送り、自己資金を増やしてから申し込みをするなど、計画全体の見直しが必要です。

(8)調達方法の合計

手順通りに記入を進めていくと必然的に、「調達の方法」の合計は、「必要な資金」合計金額と一致します。
以上で、創業計画書の「7.必要な資金と調達方法」は完成です。

【調達方法の合計の記入例】

必要な資金と調達方法の記入例

以上で、創業計画書の「7.必要な資金と調達方法」が完成となります。

1-8.【介護事業】事業の見通しの記入

次に創業計画書の「8.事業の見通し(創業当初)」について記入していきます。
売上の見込みや収支計画を示す欄です。1か月の平均で見通しを立てていきます。
右側の「売上高、売上原価(仕入高)、経費を算出された根拠」の欄には、実際に売上等を算出した計算式などを記入します。

8.事業の見通し(月平均)の記入欄

複数の記入項目がありますので、一つずつ解説していきます。

(1)事業の見通し(創業当初)の記入手順

まずは、「事業の見通し(創業当初)」から、次の手順に沿って記入していきましょう。

事業の見通し(創業当初)の記入欄

手順1.売上高①(創業当初)の記入
月の平均売上の見通しを記入します。
介護事業の場合は、「客単価×1か月の客数」で月の平均売上を算出します。
計算式は売上高計算の根拠として、右側の根拠の欄に記載しておきます。
創業当初の売上見通しなので、厳しめに見積もっておきましょう。

【売上高①(創業当初)の記入例】

売上高①(創業当初)の記入例

手順2.売上原価②(創業当初)の記入
過去の経験などから、おおよその原価率がわかれば当てはめて計算します。
訪問介護の場合は、0としてもかまいません。
売上に原価率をかけて、売上原価を算出します。
計算式は、右側の根拠の欄に記載しておきます。

【売上原価②(創業当初)の記入例】

売上原価②(創業当初)の記入例

手順3.経費(創業当初)の記入
「7.必要な資金と調達方法」で、運転資金を算出した際の金額を記入していきます。
人件費、家賃の欄には、実際の金額をそのまま記入します。
根拠の欄には、次のように内訳を記入してください。

人件費 役員報酬○万円
従業員○名×月収○万円 
アルバイト○名 時給○○円×○時間×○日=○万円
家賃 月○万円

支払利息については、日本政策金融公庫の借入金額に、創業融資の利率の目安である2.5%をかけて算出します。
借入金額に2.5%を掛けると、1年間に支払う利息の金額が出ますので、12カ月で割ることで月の支払い利息の金額が算出されます。
根拠の欄に、次のように計算の根拠を記入してください。

支払利息:〇万円(借入金額)×年2.5%÷12カ月=○万円
※創業計画書のExcelを利用している場合、小数点以下の数字は、四捨五入されて表記されてしまうようになっていますが、そのままで問題ありません。
例)0.5万円=1万円、1.4万円=1万円、1.6万円=2万円

その他の欄は、人件費、家賃以外にかかる経費の合計を記入します。
根拠の欄には次のように、内訳を記入してください。

その他、水道光熱費等○万円

【経費(創業当初)の記入例】

経費(創業当初)の記入例

合計③(創業当初)の欄は、Excelを利用している場合、自動計算で経費の合計が入力されるようになっています。

手順4.利益の記入
売上高①から、売上原価②、経費を引いた金額が利益になります。
「売上高①―売上原価②―経費合計③=利益」
Excelを利用している場合、利益は自動計算で入力されます。

この利益の中から、融資の返済を行っていくこととなります

【事業の見通し(創業当初)の記入例】

事業の見通し(創業当初)の記入例

審査に通る!事業の見通し(創業当初)ポイント
・融資の返済は、この利益の中から行っていきます。
・創業当初は、利益が若干マイナスでも問題ありません。
 この時点で利益が多すぎると、「融資を受ける必要がないのでは?」と審査官に思われてしまいかねません。
 創業当初の売上・利益は低く見積もっておいた方がベターです。

(2)事業の見通し(軌道に乗った後)の記入手順

次に、事業の見通し(軌道に乗った後)を、次の手順に沿って記入していきましょう。

事業の見通し(軌道に乗った後)の記入欄

手順1.売上高①(軌道に乗った後)の記入
半年後から1年後の売上の予想を記入します。
事業が軌道に乗るまで最低でも6ヵ月はかかると言われています。
また、日本政策金融公庫の融資担当者も6ヵ月で事業を軌道に乗せて欲しいと考えているため、ここでは6ヵ月後の売上予想を記入するようにしましょう。

「客単価×1か月の客数」で軌道に乗った後の月の平均売上を算出します。
計算式は売上高計算の根拠として、右側の根拠の欄に記入しておきます。
下記の記入例では、1か月の客数を50人から、100人に増加させています。

【売上高①(軌道に乗った後)の記入例】

売上高①(軌道に乗った後)の記入例

手順2.売上原価②(軌道に乗った後)の記入
軌道に乗った後の売上高に原価率をかけて、売上原価を算出します。
訪問介護の場合は、0としてもかまいません。
計算式は、右側の根拠の欄に記入してください。

【売上原価②(軌道に乗った後)の記入例】

売上原価②(軌道に乗った後)の記入例

手順3.経費(軌道に乗った後)の記入
経費については、大幅な変動は基本的にないと考えて問題ありません。
特に変更がない場合は、創業時の欄に記載した数字をそのまま映します。
売上の上昇に伴って増加する経費があれば、増加分を足して記入します。
下記の例では、パート従業員を増加させています。
その他経費についても増えることがあれば、○○費○万円増と記載します。

 

【経費(軌道に乗った後)の記入例】

 

経費(軌道に乗った後)の記入例

合計③(軌道に乗った後)の欄は、Excelを利用している場合、自動計算で経費の合計が入力されるようになっています。

 

手順4.利益(軌道に乗った後)の記入
売上から、売上原価、経費を引いた金額が利益になります。
Excelを利用している場合、利益は自動計算で入力されます。
「売上高①―売上原価②―経費合計③=利益」
この利益の中から、融資の返済を行っていくこととなります。

【事業の見通し(軌道に乗った後)の記入例】事業の見通し(軌道に乗った後)の記入例

審査に通る!事業の見通し(軌道に乗った後)ポイント

・利益率は10%を目指しましょう。
・この利益の中から融資の返済を行います。
 軌道に乗った後は、必ず利益がでるように計画を立て、融資の返済が滞りなく行えることをアピールましょう。

以上で、介護事業の創業計画書は完成です。

 


2.まとめ

いかがでしたでしょうか?

本記事では介護事業における創業計画書の書き方と記入例を紹介しました。
取り上げたポイントに注意しながら書き進めていただければ、融資に成功する創業計画書がおのずと完成しています。
創業計画書は、融資審査の要です。

しっかりと作り込み、何度も見直しブラッシュアップしていきましょう。

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