個人事業主で開業するメリットとは?法人設立との比較【簡易判断チャート付】

個人事業主で開業するメリットとは?法人設立との比較【簡易判断チャート付】

独立!開業!・・・成功!

会社に属し、十数年。手に職つけたあなたはこんな言葉にときめくのではないでしょうか?
業界によっては、独立するということが当たり前で「30歳を契機に一年奮起して独立した」や「10年修行して満を持して独立した」など耳にする機会は多いかもしれません。

この記事では、独立を決意した方に向けに個人事業主として独立するメリットを解説していきます。


1.個人事業主と法人の違い【メリット・デメリット】

個人事業主と法人の違いを一覧でまとめました。
この違いをそれぞれメリット・デメリットの視点で解説していきます。

個人事業主法人
事業開始の手続き簡単
開業届を税務署に提出
即日完了
煩雑
法人登記が必要
登記完了まで1~2週間
事業開始にかかる費用0円株式会社:約26万円~
合同会社:約10万円~
税金・一定の所得までは、法人に比べて税率が低い
・赤字の場合税金はかからない
・一定の所得を超えると個人事業主よりも税率が低くなる
・赤字でも税金の支払いがある
経費の範囲・事業にかかる費用のみ。
自分への給与は経費計上できない。
・事業にかかる経費に加えて、自分への給与を経費計上できる。
社会的信用度低い高い
社会保険料従業員5人未満であれば事業主負担なし従業員の社会保険料会社負担あり

それぞれのメリット・デメリットを詳しく解説していきます。

1-1.事業開始手続きについて

個人事業主法人
事業開始の手続き簡単
開業届を税務署に提出
即日完了
煩雑
法人登記が必要
登記完了まで1~2週間

個人事業主で開業するメリットは、第一に事業開始の手続きが簡単であることです。
個人事業主の場合は、基本的に開業届を税務署に提出するだけで事業の開始手続きは完了です。
開業届に記載する内容も、難しい内容ではないため、ご自身で行うことができます。

一方、法人の場合は法人登記が必要です。
法人登記には専門的な知識が必要になりますので、司法書士などの専門家に依頼することになり、法人登記完了まで最短でも1週間~2週間はかかります。

【個人事業主のメリット】
・手続きが簡単
・即日完了

【個人事業主のデメリット】
・なし

【法人のメリット】
・なし

【法人のデメリット】
・手続きが煩雑、専門的な知識が必要
・登記完了まで最短でも1~2週間かかる

1-2.事業開始にかかる費用について

 個人事業主法人
事業開始にかかる費用0円株式会社:約26万円~
合同会社:約10万円~

個人事業主の場合、事業開始のためにかかる費用は0円です。
税務署に開業届を提出するために費用はかかりません。

一方、法人の場合は登録免許税や定款の認証手数料、収入印紙代などがかかります。
また、専門家に法人の登記を依頼する場合は、専門家手数料も必要になります。

【個人事業主のメリット】
・0円

【個人事業主のデメリット】
・なし

【法人のメリット】
・費用と引き換えに、社会的信用を手に入れることができる
・専門家に依頼することで安心して確実に法人を設立することができる

【法人のデメリット】
・費用がかかる

1-3.税金について

 個人事業主
法人
税金・一定の所得までは、法人に比べて税率が低い
・赤字の場合税金はかからない
・一定の所得を超えると個人事業主よりも税率が低くなる
・赤字でも税金の支払いがある

税金については2つのポイントがあります。

  • 所得税と法人税
  • 赤字の場合の税金の支払い

それぞれ解説します。

大前提として、個人事業主の場合も法人の場合も、税金は売上から経費を引いた利益(所得)に対して課されるものであるということを理解しておいてください。

所得税と法人税

一定の所得(利益)までは、個人事業主の方が税金の支払いを安く抑えることができます。
ただし、一定の所得(利益)を超えてくると、個人事業主の方が税金の支払いが多くなる可能性があります。

これは、個人事業主に課せられる、所得税の税率と、法人に課せられる法人税の税率の違いによるものです。

個人事業主に課せられる所得税は、所得が大きくなればなるほど税率が高くなる仕組みになっており、最大で45%に及びます。
これを累進課税と言います。
一方、法人税の税率は、資本金1億円以下の中小企業の場合、最大で23.2%にとどまります。

所得税の税率と法人税の税率を比較してみましょう。

所得税の税率速算表(平成27年分以後)

法人税の税率(中小企業の場合)

比較していただくと分かるように、所得税は、所得に応じて徐々に税率が高くなっていき、課税される所得(利益)が「6,950,000円から8,999,999円まで」のところで税率が23%、それ以降は33%、40%、45%と法人税の最大税率である23.2%を超えてきます。

そのため、所得(利益)600~800万円を目安に、個人事業主と法人でどちらの方が税金の面で有利になるのか検討すると良いと言えます。
初めから所得(利益)が600~800万円を超え、その後さらに拡大させていく予定であれば、法人を設立してしまった方が、税金の面では有利になる可能性が高いです。

一方、所得(利益)は600万円以下の小規模で事業を続けていく予定の方や、今後どれくらい所得(利益)が出るかわからないという方は、まずは個人事業主で開業し、所得(利益)が600~800万円を超えてくるようになったタイミングで法人成りをするという選択も可能です。

※ただし、様々な条件により個人事業主、法人でどちらが税金のメリットがあるかは異なります。
所得(利益)600~800万円はあくまで目安と考えてください。
詳しくは専門家へ相談しシミュレーションをしてもらうようにしてください。

赤字の場合の税金の支払い

個人事業主の場合、赤字であれば税金の支払いは発生しません。
一方、法人の場合は赤字の場合も、資本金等に応じた法人住民税の約7万円の支払いが発生します。

【個人事業主のメリット】
所得(利益)600~800万円までは、法人と比べ税金が安くなる可能性がある
・赤字の場合税金の支払いは発生しない

【個人事業主のデメリット】
所得(利益)600~800万円を超えてくると法人と比べ税金が高くなる可能性がある

【法人のメリット
所得(利益)が600~800万円を超えてくると個人事業主と比べ税金が安くなる可能性がある

【法人のデメリット】
・赤字の場合でも法人住民税として約7万円の支払いが発生する

1-4.経費の範囲について

 個人事業主法人
経費の範囲・事業にかかる費用のみ。
自分への給与は経費計上できない。
・事業にかかる経費に加えて、自分への給与を経費計上できる。

経費の範囲は、個人事業主・法人どちらも「事業にかかる費用」であることは変わりません。
ですが、個人事業主の場合、自分への給与は経費として計上することはできません。

一方、法人の場合は自分への給与を経費計上することができます。
そのため、経費の範囲で言えば、法人の方がメリットがあると言えます。

前述したように、税金は売上から経費を引いた利益(所得)に対して課されるものであるため、自分への給与を経費計上できる法人の方が、節税のメリットが大きいということが言えます。

【個人事業主のメリット】
・なし

【個人事業主のデメリット】
・自分への給与を経費とすることができないため、税金が高くなる可能性がある

【法人のメリット】
・自分への給与を経費計上できるため、節税のメリットが大きい

【法人のデメリット】
・なし

1-5.社会的信用度について

 個人事業主法人
社会的信用度低い高い

個人事業主は、法人に比べると社会的信用度は低くなります。
業種によっては、法人でないと事業を開始できない、許認可等が取得できないなどのケースもあります。
また、法人としか取引をしないとしている業者もあるため、事前に確認が必要です。
さらに、従業員の確保にも支障をきたす可能性があります。

融資など銀行取引については、特段の差はないと考えて問題ありません。

事業の開始の条件や、取引先との取引に問題がない、従業員を雇用する予定がないような場合は社会的信用度の差が表立ってネックになることはないため、他の個人事業主で開業するメリットを加味して検討すると良いでしょう。

【個人事業主のメリット】
・なし(※事業主自身の信用度が重要)

【個人事業主のデメリット】
・業種によっては個人事業主では事業ができない、許認可等が取得できない可能性あり
・法人としか取引をしない業者もある
・従業員の確保が難しくなる

【法人のメリット】
・「個人事業主であるから」ということだけを理由に、取引等を拒否されたり、必要な許可等が取得できなくなることはない。

【法人のデメリット】
・なし(※会社自体の信用度が重要)

1-6.社会保険料について

個人事業主法人
社会保険料従業員5人未満であれば事業主負担なし会社負担あり

個人事業主で、従業員が5人未満であれば社会保険の加入義務がないため、社会保険料の事業主の負担はありません。
従業員が各々、国民年金・国民健康保険に加入し、保険料を支払います。

一方、法人の場合、従業員数に関わらず社会保険への加入義務があるため、従業員の社会保険料の2分の1を会社が負担します。
その額は、おおよそ給与の15%程におよびます。
ですが、社会保険への加入することで、「社会保険完備」と求人に記載することができ、人材確保には有利に働くといったメリットもあります。

【個人事業主のメリット】
・社会保険料の負担がない

【個人事業主のデメリット】
・採用の面で不利になる
※従業員5人未満でも任意で社会保険に加入することができます。

【法人のメリット】
・優秀な人材を確保しやすくなる

【法人のデメリット】
・社会保険料の会社負担が発生する


2.個人事業主で開業すべきか法人を設立すべきかの判断

個人事業主で開業すべきか、法人を設立すべきか迷ったら、次のフローチャートを参考に検討してみてください。

個人事業主or法人設立判断フローチャート

2-1.個人事業主で開業した方が良いケース

次の4つ全てに当てはまる方は個人事業主で開業した方が、多くのメリットが享受できると言えます。

(1)開業や許認可に法人格の取得要件がない

介護事業など、法人を設立しないと開業や、許認可が取得できない業種があります。
事前に確認が必要です。

(2)取引先との取引に支障がない

取引先の社内規定などによって、個人事業主とは一切取引をしない、特定の仕事を依頼しないとしているケースがあります。

(3)所得(利益)が600~800万円以上になる予定はない

売上-経費=利益が600~800万円以上になることを想定していない場合は、個人事業主で開業した方が税金の負担は少なくなる可能性があります。初年度は売上が上がるまで時間がかかる可能性があります。
初年度は、様子見として個人事業主として開業し、次年度以降、法人成りを検討しても良いでしょう。

(4)常時雇用する従業員が5人未満

個人事業主の場合、従業員が5人未満であれば、社会保険料の加入義務がなく会社負担もありません。

2-2.法人を設立した方が良いケース

次の内、1つでも当てはまる場合は法人を設立した方がメリットがあると言えます。

(1)開業や許認可に法人格の取得要件がある

介護事業等、法人を設立しないと起業ができない業種があります。
事前に要件の確認をし、法人格の取得要件がある場合は、法人を設立しましょう。

(2)取引先との契約条件に法人であることが必要

取引の条件に、法人であることが求められる場合は、売上に直結しますので法人を設立すべきです。
建設業など、請負契約の際によくみられるケースです。

(3)所得(利益)が600~800万円以上になる予定

初年度から、売上-経費=利益が600~800万円以上になることを想定している場合、初めから法人を設立した方が良いと言えます。
ただし、詳細なシミュレーションが必要になります。詳しくは専門家へ相談してください。

(4)初年度から従業員を5人以上採用する予定

初めから5人以上の従業員を採用する予定であれば、社会的信用力の高い法人を設立し、社会保険完備と求人に載せることで人材確保の面で有利になります。
個人事業主の場合でも、従業員が5人以上になれば社会保険への加入義務があり、社会保険料の会社負担が発生しますので、負担は変わりません。


3.まとめ

いかがでしたでしょうか?
結論として個人事業主のほうが簡単に始められ、費用負担も少ないため、起業時の事業が小規模なうちは個人事業主として開業した方が多くのメリットを享受できる可能性があります。
そして、事業が軌道に乗りより大きな規模で事業を行いたいと思ったとき法人化を検討してもよいでしょう。

一方で、初めから法人を設立した方が良いケースもあります。
少しでも迷う場合は、一度税理士等の専門家にご相談ください。
様々な角度からシミュレーション、判断し、より良い選択のアドバイスを受けることができます。

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