会社設立×決算月の決め方|成功する人はここまで戦略的に考える

会社設立×決算月の決め方|成功する人はここまで戦略的に考える

決算月の設定は、節税・資金繰り・事業運営の効率すべてに関わる、最初にして最大の「戦略判断」です。

会社設立時、「決算月はいつにしますか?」と聞かれて、なんとなく決めていませんか?
実はこの“なんとなく”の判断が、後々大きな影響を及ぼすことがあります。
決算月は、毎年必ず訪れる「納税・決算対応」の起点となる、いわば会社経営のリズムを決めるもの。

設立時に安易に決めてしまうと、繁忙期と重なって決算業務が大混乱したり、資金が不足して納税に苦労したり、消費税の免税期間を損してしまったり……と、思わぬ落とし穴にはまってしまう可能性があります。

この記事では、起業支援に特化した税理士の視点から、「どの月に決算を迎えるのがベストなのか?」を見極める4つの視点とともに、後悔しないための戦略的な決算月の決め方をお伝えします。


1.決算月を甘く見てはいけない理由

会社の「決算月」は、会社設立時に定款で定めておくのが一般的です。
しかし、この決算月をいつにするかが、今後の会社経営にどんな影響を及ぼすのか、会社設立時点では意識されていないことがほとんどです。

例えば、次のような場面で「決算月の選び方」によって差が出ます。

・繁忙期と重なり、業務や納税準備が混乱する
・法人税の納税時期が資金不足の時期と重なり、資金繰りに苦しむ
・消費税が免除される期間が短くなる(または最長になる)

・節税対策が間に合わず、結果的に税負担が重くなる

専門家からのワンポイントアドバイス
決算月は、毎年の納税や経理業務のタイミングを決定づける「経営の土台」とも言えます。
設立時に慎重に選ぶことで、将来的な資金繰りや税務対応の余裕が大きく変わります。

次章では、実際にどのように決算月を選べばよいのか、4つの視点から具体的な判断基準を解説していきます。


2.賢い決算月の選び方【4つの視点】

ここからは、実際に決算月を選ぶうえで考慮すべきポイントを4つの視点からご紹介します。
どれも「経営の安定」と「税務上のメリット」に直結する重要な視点ですので、自社の状況に照らし合わせながら検討してみてください。

① 繁忙期を避ける

決算月は、普段の営業活動では発生しない、特別な事務作業を行わなければなりません。
取引記録や経費の証憑を整理し、帳簿や通帳と突き合わせ、在庫棚卸しや未収・未払の確認など、普段の業務とは異なる多くの事務作業が一気に発生します。
「税理士に依頼しているから大丈夫」と安心してしまいがちですが、税理士が担当するのはあくまで決算書や申告書の作成・提出です。
日々の資料整理や棚卸などの準備作業は、経営者自身が責任を持ってしなければなりません。
これらが不十分だと、税理士も正確な申告ができず、申告ミスや期限遅れに繋がるリスクがあります。
特にこの時期が本業の繁忙期と重なると、こうした事務対応が後回しになり、経理・税務対応が破綻しやすくなります。

専門家からのワンポイントアドバイス

「繁忙期は売上に集中。閑散期に経理を片づける」この原則を意識しましょう。
また、1年分の書類をまとめて処理するのは非常に負担が大きく、ミスの原因にもなります。
少なくとも月に1回は領収書や請求書を整理し、会計資料を税理士に提出する習慣を持つことで、決算時の混乱を避けることができます。

② 資金が潤沢な時期を選ぶ

法人税や消費税は、決算後2か月以内に納税します。
例えば、3月決算月とした場合、納税期限は5月末です。
このタイミングで資金が乏しいと、納税によって資金繰りが圧迫されてしまいます。

特に建設業等のように、契約から入金までに時間がかかる業種では、年度末に売上が確定しても、実際に現金が入ってくるのは数か月後というケースが少なくありません。
工事完了から請求・入金までに2〜3か月、場合によっては4〜6か月以上かかることもあり、納税時点で現金が間に合わないリスクは非常に高くなります。
決算月の選択を間違えると、納税のタイミングまでに現金が手元にない状態になり、資金繰りに行き詰まるおそれがあります。
納税資金の調達のために、急遽借入を検討せざるを得ない、あるいは延滞によって信用を失うリスクが生じることもあります。

専門家からのワンポイントアドバイス
「納税タイミングに向けて資金が集まるか」これを設立時点から逆算しましょう。
特に現金の入金まで時間がかかる業種では、納税期限時点で手元にキャッシュがあるかどうかが非常に重要です。
売上の発生時期だけでなく、実際の入金時期も見据えたうえで決算月を設定することで、資金繰りに余裕を持った経営が可能になります。

③ 消費税免除期間を最大化(インボイス制度対応版)

起業直後、多くの人が見落としがちなのが「消費税の免除期間」です。
実は、法人を設立した場合、原則として設立初年度とその翌年度の2年間は、一定の条件を満たすことで消費税を納めなくてもよくなるケースがあります。これが「消費税の免税事業者制度」です。

この免税期間は、決算月の選び方によって“最大2年間”取れるかどうかが左右されるため、起業家にとっては非常に重要な検討ポイントです。

※消費税の基礎
消費税は、商品やサービスを販売したときに、取引金額に対してかかる税金です。
事業者は、お客さんから預かった消費税(売上にかかる消費税)から、仕入れや経費で支払った消費税を差し引いて、その差額を国に納める仕組みになっています。
これを行うのが「課税事業者」です。

ただし、新しく会社を設立した場合は、すぐに課税事業者になるとは限りません。
一定の条件を満たしていれば、最初の1~2年間は「免税事業者」として、消費税を納める必要がなくなる制度があります。

🔻決算月で免税期間はこう変わる

たとえば、4月に会社を設立したときのケースを見てみましょう。

・12月決算 → 第1期は「8か月」で終了 → 免税期間は最大で「1年8か月」
・3月決算 → 第1期が「12か月」 → 免税期間を最大限に活用できる(丸2年)

つまり、設立月の「前月」を決算月に設定すると、免税期間を最大限確保できるということです。

ただし・・・インボイス制度の導入により、注意が必要に

しかし、2023年10月からスタートした「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」の影響で、たとえ免税事業者であっても、必ずしも“得”とは言えない状況となりました。

※インボイス制度とは?
簡単に言えば、「消費税を納めている事業者(課税事業者)」が、お客さんに対して“正しい消費税額を記載した請求書”を発行するための制度です。
これが「インボイス(適格請求書)」と呼ばれます。

インボイスがないと、取引先(特に法人や個人事業主)はその仕入れや外注費について「仕入税額控除(=支払った消費税を差し引く処理)」ができません。
つまり、免税事業者(=消費税を納めていない事業者)からの請求は、取引先にとって“経費として不利”になるということです。

その結果、以下のような問題が起こるようになりました。
・「インボイスを発行できないなら取引できません」と断られる
・「免税ならその分安くして」と価格交渉される
・起業直後でもあえて課税事業者になり、インボイス登録せざるを得ないケースが増加中

結論:起業直後でも「免税事業者のまま」ではいられないケースもある

たしかに、免税期間が長ければ、その間は消費税の納税をしなくてよいため、キャッシュの流出を抑えることができます。
しかし、BtoB(企業間取引)が多い業種では、「インボイスを発行できるかどうか」が取引継続の可否を左右する重要な判断材料になります。
そのため、たとえ免税期間が長く取れるとしても、取引先との関係や売上機会を失わないために、起業初年度から課税事業者としてスタートするという判断も必要になります。

つまり、決算月を「免税期間を最大化できるかどうか」だけで決めるのではなく、インボイス制度下における自社のビジネス環境をふまえた総合的な視点が欠かせません。

🔻業種別の見極めポイント

ビジネスモデルインボイスの影響決算月戦略
BtoC(個人相手)少ない → 免税期間の活用が有効設立月の前月を決算月に設定
BtoB(法人相手)強い → インボイス登録が求められる初年度から課税事業者選択も視野に
専門家からのワンポイントアドバイス
起業直後の「消費税免除のメリット」だけで決算月を選ぶのは、もはや時代遅れです。
インボイス制度の導入により、免税であること自体が取引リスクにつながる可能性がある今、重要なのは「取引先のニーズ」と「ビジネスモデル」に即した判断です。
特に、インボイスを登録すべきかどうかの判断は、売上規模や取引先の属性、今後の事業計画によっても変わってきます。
税理士などの専門家に早めに相談することをおすすめします。

④ 売上の季節変動にあわせて節税の余地を確保する

季節によって売上の変動が大きい事業の場合は、売上の大きい時期を年度の前半になるように決算月を定めることで、慌てることなく余裕をもって節税対策や資金計画を立てることができます。

売上の多い時期が決算月に近いと、予想以上の利益が出た場合に節税対策を打つ時間が足りなくなり、結果的に税負担が大きくなることもあります。
例えば、広告費の追加投下や設備投資、福利厚生費の活用といった節税策を検討しても、タイミングが遅ければ決算に反映できません。

そのため、売上や入金が増える時期を年度の前半に持ってくるように決算月を設定することで、その後の数ヶ月を使って計画的な節税対策を実行しやすくなります。

専門家からのワンポイントアドバイス

ただし、節税がすべてではありません。
必要な納税を行いながら、いかに利益を会社に残すかという視点も重要です。
会社に十分な利益が残っていなければ、いざというときの備えがなくなり、金融機関や取引先からの信用力が低下してしまうおそれがあるからです。
過度な節税で利益を減らしてしまうと、かえって成長のチャンスを逃すことにもなりかねません。

決算月の設定は、単なる節税だけでなく、資金調達や事業拡大を見据えた財務戦略の一部と捉えましょう。
そのバランスを取るためにも、税理士とじっくり相談して中長期的な視点で戦略を立てることをおすすめします。

専門家からのワンポイントアドバイス
ただし、節税がすべてではありません。
必要な納税を行いながら、いかに利益を会社に残すかという視点も重要です。

会社に十分な利益が残っていなければ、いざというときの備えがなくなり、金融機関や取引先からの信用力が低下してしまうおそれがあるからです。
過度な節税で利益を減らしてしまうと、かえって成長のチャンスを逃すことにもなりかねません。

決算月の設定は、単なる節税だけでなく、資金調達や事業拡大を見据えた財務戦略の一部と捉えましょう。そのバランスを取るためにも、税理士とじっくり相談して中長期的な視点で戦略を立てることをおすすめします。


3.まとめ|決算月は“戦略的に”決める

決算月の設定は、会社の税務、資金繰り、経理体制、さらには事業の成長スピードにまで影響する、極めて重要な「経営判断」です。

本記事では、決算月を選ぶうえで押さえておくべき4つの視点を紹介しました。

① 繁忙期を避ける:決算業務と本業がバッティングしない時期を選ぶ
② 納税資金の確保:資金に余裕がある時期に納税タイミングが来るようにする
③ 消費税免除期間の活用:免税メリットとインボイスの影響を総合的に判断
④ 節税と利益の最適化:節税だけでなく利益確保による信用力も意識する

これらの観点を踏まえることで、納税や資金調達の準備に追われることなく、会社の成長に集中できる環境を整えることが可能になります。

✅ 次にやるべきこと
・自社の繁忙期・資金の流れ・売上の季節性を洗い出してみましょう。
・インボイス登録の必要性や消費税免除のメリットを再確認しましょう。
・そして、決算月をどこに設定するのが最適か、税理士に相談してみてください。

決算月は、後からでも変更可能ですが、変更に手間がかかります。
経営の土台となる決算月を、将来を見据えて、慎重かつ戦略的に選びましょう。

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