長らく公募が行われていなかった事業再構築補助金ですが、第12回公募から制度を大きく見直した上で再開することが発表されました。
公募スケジュールは下記の通りです。
本記事では、第12回公募の主な変更点について詳しく解説していきます。
目次
1.事業再構築補助金(第12回公募)の主な6つの変更点
第12回公募の主な変更点は次の6つです。
変更点(1)申請枠・類型の見直し
変更点(2)上乗せ措置への追加申請が可能に
変更点(3)売上減少要件の廃止
変更点(4)事前着手の廃止
変更点(5)コロナ借換加点
変更点(6)口頭審査の実施
それぞれ詳しく解説していきます。
変更点(1)申請枠・類型の見直し
11回公募まで6枠あった申請枠が3枠5類型に整理され、わかりやすくなりました。
各申請枠・類型ごとに要件が設けられています。
経済産業省.「事業再構築補助金(制度の概要)」. https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/summary.pdf?0423 , (参照2024/4/24)
事業再構築補助金の全体の概要は下記の通りです。
枠(類型) | 補助上限(従業員数による) | 補助率 |
成長分野進出枠 (通常類型) | 最大6,000万円(※7,000万円) ※短期に大規模賃上げを行う場合 | • 中小企業1/2(※2/3) • 中堅企業1/3(※1/2) ※短期に大規模賃上げを行う場合 |
成長分野進出枠 (GX進出類型) | 中小:最大8,000万円(※1億円) 中堅:最大1億円(※1.5億円) ※短期に大規模賃上げを行う場合 | • 中小企業1/2(※2/3) • 中堅企業1/3(※1/2) ※短期に大規模賃上げを行う場合 |
コロナ回復加速化枠 (通常類型) | 最大3,000万円 | • 中小企業2/3 • 中堅企業1/2 |
コロナ回復加速化枠 (最低賃金類型) | 最大1,500万円 | • 中小企業3/4(※2/3) • 中堅企業2/3(※1/2) ※コロナで抱えた債務の借換を行っていない場合 |
サプライチェーン強靭化枠 | 3億円(※5億円) ※建物費を含む場合 | • 中小企業1/2 • 中堅企業1/3 |
各申請枠・類型について詳しく解説します。
変更点(1)-1.成長分野推進枠(通常類型)
新たに取り組む事業が成長分野に該当する事業者又は、既存事業の市場規模が縮小の傾向にある事業者が利用できるものです。
成長分野推進枠(通常類型)の概要 | |
補助上限 (従業員数による) | 最大6,000万円(※7,000万円) ※短期に大規模賃上げを行う場合 |
補助率 | • 中小企業1/2(※2/3) • 中堅企業1/3(※1/2) ※短期に大規模賃上げを行う場合 |
対象経費 | 建物費、機械装置・システム構築費、技術導入費、外注費・専門家経費、広告宣伝費・販売促進費、研修費、廃業費 ※廃業費は成長分野促進枠(通常類型)のみ |
業種・業態に制限がありますので、下記のリストを確認してください。
【市場拡大要件】業種・業態リスト
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/seichowaku_list.pdf
【市場縮小要件】業種・業態リスト
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/tenkanwaku_list.pdf
※事務局が指定する業種・業態以外でも応募時に要件を満たす業種・業態であることを証明するデータを提出し認められた場合には対象となり得ます。
変更点(1)-2.成長分野推進枠(GX進出類型)
グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取組での事業再構築を行う事業者が利用できるものです。
成長分野推進枠(GX進出類型)の概要 | |
補助上限 (従業員数による) | 中小:最大8,000万円(※1億円) 中堅:最大1億円(※1.5億円) ※短期に大規模賃上げを行う場合 |
補助率 | • 中小企業1/2(※2/3) • 中堅企業1/3(※1/2) ※短期に大規模賃上げを行う場合 |
対象経費 | 建物費、機械装置・システム構築費、技術導入費、外注費・専門家経費、広告宣伝費・販売促進費、研修費、廃業費 |
グリーン成長戦略「実行計画」14分野とは?
日本は、2020年10月に、2050年カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。
この2050年カーボンニュートラルを実現するために、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定、成長が期待される14の重要分野について、実行計画及び目標を掲げたものです。
詳しくは、下記を参照してください。
経済産業省「2050カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/ggs/index.html
変更点(1)-3.コロナ回復加速枠(通常類型)
コロナで抱えた債務の借換を行っている事業者や事業再生に取り組む事業者が利用できます。
コロナによって債務をかかえ、その借換を行っている事業者はチャンスです。
コロナ回復加速枠(通常類型)の概要 | |
補助上限 (従業員数による) | 最大3,000万円 |
補助率 | • 中小企業2/3 • 中堅企業1/2 |
対象経費 | 建物費、機械装置・システム構築費、技術導入費、外注費・専門家経費、広告宣伝費・販売促進費、研修費 |
変更点(1)-4.コロナ回復加速枠(最低賃金類型)
最低賃金引上げの影響を大きく受けている事業者が利用できるものです。
2022 年 10 月から 2023 年9月までの間で、3か月以上最低賃金+50 円以内で雇用している従業員が全従業員数の 10%以上いることが条件となっています。
コロナ回復加速枠(最低賃金類型)の概要 | |
補助上限 (従業員数による) | 最大1,500万円 |
補助率 | • 中小企業3/4(※2/3) • 中堅企業2/3(※1/2) ※コロナで抱えた債務の借換を行っていない場合 |
対象経費 | 建物費、機械装置・システム構築費、技術導入費、外注費・専門家経費、広告宣伝費・販売促進費、研修費 |
変更点(1)-5.サプライチェーン強靭化枠
国内サプライチェーンの強靭化の観点から、ポストコロナに対応した事業再構築を行う事業者が利用できるものです。サプライチェーン強靭化枠のみ、別途公募要領が用意されていますので注意してください。
サプライチェーン強靭化枠 | |
補助上限 | 3億円(※5億円)※建物費を含む場合 |
補助率 | • 中小企業1/2 • 中堅企業1/3 |
対象経費 | 建物費、機械装置・システム構築費 |
変更点(2)上乗せ措置への追加申請が可能に
「成長分野推進枠」および「コロナ回復加速枠」に申請する場合、「卒業促進上乗せ措置」または、「中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置」に追加で申請することが可能です。
事業規模の拡大、賃上げに取り組む事業者を重点的に支援するものです。
それぞれ詳しく解説します。
変更点(2)-1.卒業促進上乗せ措置
「成長分野推進枠」および「コロナ回復加速枠」を申請する事業者で、中小企業等から中堅企業等に成長する事業者が追加で申請することができます。
卒業促進上乗せ措置の概要 | |
補助上限 (同時に申請する枠による) | 成長分野推進枠【通常類型】 最大6,000万円(※7,000万円) ※短期に大規模賃上げを行う場合 成長分野推進枠【GX進出類型】 中小:最大8,000万円(※1億円) 中堅:最大1億円(※1.5億円) ※短期に大規模賃上げを行う場合 コロナ回復加速枠【通常類型】 最大3,000万円 コロナ回復加速枠【最低賃金類型】 最大1,500万円 |
補助率 | • 中小企業1/2 • 中堅企業1/3 |
対象経費 | 建物費、機械装置・システム構築費、技術導入費、外注費・専門家経費、広告宣伝費・販売促進費、研修費 ※ただし、「成長分野推進枠」および「コロナ回復加速枠」で申請する補助対象経費と明確に分ける必要があります。 |
変更点(2)-2.中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置
「成長分野推進枠」および「コロナ回復加速枠」を申請する事業者で、大規模な賃上げに取り組む事業者が追加で申請できるものです。
中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置の概要 | |
補助上限 | 100万~3,000万円 |
補助率 | • 中小企業1/2 • 中堅企業1/3 |
対象経費 | 建物費、機械装置・システム構築費、技術導入費、外注費・専門家経費、広告宣伝費・販売促進費、研修費 ※ただし、「成長分野推進枠」および「コロナ回復加速枠」で申請する補助対象経費と明確に分ける必要があります。 |
上乗せ措置の申請は、「成長分野推進枠」および「コロナ回復加速枠」の申請と同時に行わなければなりません。また、上乗せ措置の両方に申請することはできません。
変更点(3)売上減少要件の廃止
これまで、事業再構築補助金に設けられてきた売上減少要件は、第12回公募ではなくなりました。
変更点(4)事前着手の廃止
第12回公募より、事前着手制度は原則廃止となりました。
ただし、経過措置として下記の場合に限り、事前着手制度の利用が認められます。
①第10回・第11回公募において、物価高騰対策・回復再生応援枠または、最低賃金枠で不採択となった事業者、が第12回公募でコロナ回復加速枠(通常類型・最低賃金類型)に申請する場合
②第10回公募においてサプライチェーン強靭化枠で不採択となった事業者が、第12回公募でサプライチェーン強靭化枠に申請する場合
なお、本経過措置を持って、事前着手制度は完全に廃止する旨が公募要領に記載されていますので、事前着手制度の利用は今回がラストチャンスとなります。
変更点(5)コロナ借換加点
応募申請時点にて、コロナ借換保証等で既往債務を借り換えている事業者に対し加点を行います。
コロナ融資の借換を行っている方は、チャンスです。
※コロナ借換保証等とは以下の制度を指しています。
(1)伴走支援型特別保証(コロナ借換保証)
(2)コロナ経営改善サポート保証
(3)新型コロナウイルス感染症特別貸付
(4)生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付
(5)新型コロナ対策資本性劣後ローン
(6)生活衛生新型コロナ対策資本性劣後ローン
(7)[新型コロナ関連]マル経融資
(8)[新型コロナ関連]生活衛生改善貸付
(9)[新型コロナ関連]沖縄雇用・経営基盤強化資金
変更点(6)口頭審査の実施
第12回公募より、一定の審査基準を満たした事業者の中から必要に応じて、オンライン口頭審査が実施されることになりました。
所要時間は15分程度とされており、事業計画について、事業の適格性、革新性、優位性、実現可能性の観点で審査が行われます。
口頭審査は、申請事業者自身(法人代表または担当者、経理担当者)1名が対応する必要があります。
外部のコンサルタント等申請事業者以外の対応、同席は認められていません。
また、口頭審査の対象になったにも関わらず、受験されなかった場合は不採択となってしまいますので注意が必要です。
2.まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、大幅に見直しれた事業再構築補助金(第12回公募)の主な変更点について解説していきました。
主な変更点は次の6つです。
変更点(1)申請枠・類型の見直し
変更点(2)上乗せ措置への追加申請が可能に
変更点(3)売上減少要件の廃止
変更点(4)事前着手の廃止
変更点(5)コロナ借換加点
変更点(6)口頭審査の実施
特にコロナ禍で、融資を受け借換を行った事業者は、補助率の高いコロナ回復加速枠への申請ができたり、審査において加点を受けることができます。
有利に補助金の申請ができるチャンスです。
是非、この機会に補助金の活用し、事業の再構築を図っていきましょう。
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