飲食店が使える補助金・助成金の概要と実際の活用事例を紹介していきます。
「もらえる補助金があるなら、もらいたい。」
「知り合いが、補助金をもらって新しいことを始めたらしい。自分もやりたい!」
とお考えなのではないでしょうか?
確かに補助金は、【お金がもらえる】ありがたい制度です。
しかし、制度の内容は複雑なものが多く、申請をあきらめてしまう方も多くいます。
そこで今回は飲食店にフォーカスし、飲食店が使える補助金の概要と、実際の活用事例を紹介していきます。
活用事例を参考にすることで、ご自身の事業で使える補助金のイメージがしやすくなりますので、是非最後まで読んでみてください。
目次
1.飲食店が使える補助金・助成金一覧
飲食店が使える主な補助金・助成金は次の通りです。(令和5年6月現在)
名称 | 補助金額(上限) | 概要 |
小規模事業者持続化補助金 | 50万円~250万円 (特例適用・申請枠による) | 販路拡大や業務効率化を支援 |
ものづくり補助金 | 750万円~7,000万円 (申請枠・従業員数による) | 革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援 |
事業再構築補助金 | 100万円~1.5億円 (申請枠・従業員数による) | 新市場進出、事業・業種転換等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援 |
IT導入補助金 | 100万円~450万円 (申請枠による) | 生産性の向上に資するITツール(ソフトウェア、サービス等)を導入するための事業費等の経費の一部を補助 |
キャリアアップ助成金 (正社員化コース) | 28万5,000円~57万円 (中小企業・一人当たり) | アルバイトやパートなどの、非正規労働者を正社員化した場合に助成 |
番外編 (自治体や民間の団体の実施する補助金) | 補助金による | 補助金による |
それぞれ詳しく解説していきます。
1-1.小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路拡大や業務効率化を支援するため、その経費の一部を補助する制度です。
法人、個人事業主問わず申請が可能、創業1年目の事業者でも利用することができます。
飲食店の場合、原則、常時使用する従業員の数が5人以下の事業者が申請可能です。
経費として認められる範囲も広いため、まず初めに検討していただきたい補助金です。
概要は以下の通りです。
申請できる人 | 常時使用する従業員が5人以下の飲食店 |
補助金額(上限) | 50万円〜250万円(特例適用・申請枠による) |
補助率 | 2/3または3/4 |
対象経費 | 機械装置設置費・広報費・ウェブサイト関連費・展示会出展費・旅費・開発費・資料購入費・雑役務費・借料・設備処分費・委託、外注費 |
【飲食店の小規模業者持続化補助金の活用事例】
飲食店の小規模事業者持続化補助金の活用事例を紹介いたします。
【ラーメン屋】
キッチンカー事業を開始。
店内飲食にとどまらず、自ら全国各地のイベントに出向き全国に販路を拡大。
そのためにキッチンカーの加装工事や、のぼり、広告宣伝等の投資が必要となった。
小規模事業者持続化補助金を活用し、全体の投資額400万円の投資のうち、250万円を補助金で受け取ることができ、自己負担150万円でキッチンカー事業を開始することができた。
(全体の投資)キッチンカー加装工事・のぼり・広告宣伝費 400万円
(補助金額)250万円
(自己負担額)150万円
【イタリアンレストラン】
コロナ禍で店内飲食が難しくなりテイクアウト事業を開始。
店舗設備やパッケージング、広告宣伝費等の投資が必要となった。
小規模事業者持続化補助金を活用し、全体の投資額300万円のうち、200万円を補助金で受け取ることができ、自己負担10万円でテイクアウト事業を開始することができた。
(全体の投資)テイクアウト用店舗設備の改装・パッケージデザイン費用・広告宣伝費用 300万円
(補助金額)200万円
(自己負担額)100万円
【カフェ】
高齢者が集まりやすいコミュニティカフェ事業を開始。
近隣地域の高齢化が目立つ中、顧客ターゲットを高齢者へ変更。
高齢者が来店しやすいカフェにするために、店内のバリアフリー工事、トイレの改装が必要となった。
小規模事業者持続化補助金を活用し、全体の投資額350万円のうち200万円を補助金で受け取ることができ、
自己負担150万円で事業を開始することができた。
(全体の投資)店内のバリフリー工事・トイレの改装工事 350万円
(補助金額)200万円
(自己負担額)150万円
小規模事業者持続化補助金について詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
1-2.ものづくり補助金
ものづくり補助金は、革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援する補助金制度です。
法人、個人事業主問わず申請が可能、創業1年目の事業者でも利用することができます。
小規模事業者持続化補助金と比べ、補助金額も大きいため、大規模な設備投資を行う際におすすめの補助金です。
概要は以下の通りです。
申請できる人 | 中小企業・個人事業主 |
補助金額(上限) | 750万円〜7,000万円 (申請枠、従業員数等による) |
補助率 | 1/2〜3/4(申請枠、従業員数による) |
対象経費 | 機械装置システム構築費・技術導入費・専門家経費・運搬費・クラウドサービス利用費・外注費・知的財産権等関連経費・広告宣伝、販売促進費・原材料費・海外旅費・通訳、翻訳費 |
【飲食店のものづくり補助金の活用事例】
飲食店のものづくり補助金の活用事例を紹介いたします。
【そば屋】
テイクアウト商品の開発事業を開始。
自宅でも、お店で食べるようなおいしいお蕎麦を提供するべく、最新製麺機導入が必要となった。
ものづくり補助金を活用し、全体の投資額800万円のうち400万円を補助金で受け取ることができ、自己負担400万円でテイクアウト商品の開発・販売を開始することができた。
最新の製麺機の導入により生産性向上・品質高度化を図ることができ、テイクアウトに加えインターネット通販を開始、全国へ販路開拓が可能となった。
(全体の投資)最新製麺機導入・商品開発費用他 800万円
(補助金額)400万円
(自己負担額)400万円
【レストラン】
自社冷凍食品の生産・インターネット通販の開始。
店内飲食にとどまらず全国へ販路拡大をすべく、冷凍食品の生産、インターネット通販を開始。
料理の味を落とさず冷凍食品とするために特殊冷凍機の導入が必要となった。
ものづくり補助金を活用し、全体投資額1,000万円のうち500万円を補助金で受け取ることができ、自己負担500万円で自社冷凍食品の開発・販売を開始することができた。
(全体の投資)特殊冷凍機の導入・商品開発費用他 1,000万円
(補助金額)500万円
(自己負担額)500万円
【カフェ】
カフェが特製コーヒー豆の焙煎事業に挑戦
カフェ経営者が、自店の特製ブレンドコーヒーを自社で焙煎するために、焙煎機の導入が必要となった。
ものづくり補助金を活用し、全体投資額600万円のうち、300万円をものづくり補助金でカバーし、自己負担は300万円でコーヒー豆の焙煎事業を開始することができた。
焙煎機の導入により、自家製ブレンドコーヒー豆の販売を開始し、カフェ内だけでなく、オンラインで全国に販路を開拓した。
(全体の投資)焙煎機・商品開発費用他 600万円
(補助金額)300万円
(自己負担額)300万円
ものづくり補助金について詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
1-3.事業再構築補助金
事業再構築補助金は、新市場進出、事業・業種転換等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援する補助金制度です。
法人、個人事業主問わず申請が可能です。
補助金額も大きく、建物の建築費用が補助金の対象となるのはこの事業再構築補助金だけであるため、思い切った事業の再構築を実施する際におすすめの補助金です。
概要は以下の通りです。
申請できる人 | 中小企業・小規模事業者(申請枠により要件有) |
補助金額(上限) | 100万円〜1.5億円(申請枠、従業員数等による) |
補助率 | 1/2〜3/4(申請枠による) |
対象経費 | 建物費・機械装置システム構築費・技術導入費・専門家経費・運搬費・クラウドサービス利用費・外注費・知的財産権等関連経費・広告宣伝、販売促進費・研修費、廃業費 |
【飲食店の事業再構築補助金の活用事例】
飲食店の事業再構築補助金の活用事例を紹介いたします。
【レストラン】
冷凍ケーキのオンライン販売事業を開始、全国へ販路開拓。
レストランの経営者が、自店で人気のケーキのオンライン販売事業で事業の再構築に挑戦。
ケーキの量産体制の構築(製造工場の建築・量産のための厨房機器の導入)とケーキのおいしさを保ったまま冷凍するための特殊冷凍機の導入が必要となった。
事業再構築補助金を活用し、全体投資額7,500万円のうち、5,000万円を事業再構築補助金でカバーし、自己負担は2,500万円で事業を開始することができた。
(全体の投資)製造工場の建築・量産のための厨房機器・特殊冷凍機 7,500万円
(補助金額)5,000万円
(自己負担額)2,500万円
【居酒屋】
宅配弁当事業に事業転換。
地域の高齢化に着目し、居酒屋の経営者が宅配弁当事業で事業の再構築に挑戦。
宅配弁当製造の為の店内改装費用・弁当用厨房設備の購入が必要となった。
事業再構築補助金を活用し、全体投資額1,500万円のうち、1,000万円を事業再構築補助金でカバーし、自己負担は500万円で事業を開始することができた。
(全体の投資)店内改装費用・弁当用厨房設備 1,500万円
(補助金額)1,000万円
(自己負担額)500万円
【カフェ】
菓子製造業に事業転換。
地元の食材を活用した焼き菓子の製造・お土産事業で再構築に挑戦。
店頭及び、道の駅などに卸売りを展開。
菓子製造の為の店舗改装費用、大型オーブン等の厨房機器の導入、おみやげとしてのパッケージデザインが必要となった。
事業再構築補助金を活用し、全体投資額1,000万円のうち、666万円を事業再構築補助金でカバーし、自己負担は334万円で事業を開始することができた。
(全体の投資)店舗改装費用、大型オーブン等の厨房機器の導入、パッケージデザイン 1,000万円
(補助金額)666万円
(自己負担額)334万円
事業再構築補助金について詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
1-4.IT導入補助金
IT導入補助金は、生産性の向上に役立つITツール(ソフトウェア、サービス等)を導入するための経費の一部を補助・支援する制度です。
創業2年目以降であれば、法人、個人事業主問わず申請が可能です。
IT導入補助金は、補助金の申請前に導入したいITツールとIT導入支援事業者(ITツール販売事業者)を選定し進めていきます。
IT導入支援事業者(ITツール販売事業者)と二人三脚で補助事業を進めることになりますので、プロに相談しながらITツールの導入及び、補助金の申請ができる仕組みが整備されています。
概要は以下の通りです。
申請できる人 | 中小企業・小規模事業者 |
補助金額(上限) | 100万円~450万円(申請枠による) |
補助率 | 1/2〜3/4(申請枠による) |
対象経費 | 【全業種共通】 ・財務会計ソフト ・スタッフ/給与管理システム ・自動化/効率化システム ・売上管理システム ・顧客管理システム ・福利厚生システム ・労務管理システム等 【飲食店 】 ・オーダーエントリーシステム ・在庫管理システム ・POSレジ会計システム ・SNSの活動支援ツール ・予約受付システム ・外国人対応コミュニケーションシステム等 |
【飲食店のIT導入の活用事例】
飲食店のIT導入補助金の活用事例を紹介いたします。
【お弁当販売店】
・セルフ注文・レジ導入で業務効率化
・給与計算システムの導入で、時間削減と正確性向上
【居酒屋】
オーダーエントリーと売上管理システム導入で人員不足を解消
予約受付システムと顧客管理システムの導入で24時間ウェブ管理可能に、電話対応も減少
【レストラン】
・多言語対応型アプリケーションを作成し、顧客自身のスマホから注文できるようにし、注文の効率化と外国人観光客へ対応
・在庫管理システムの導入で廃棄ロスを削減
IT導入補助金について詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
1-5.キャリアアップ助成金(正社員化コース)
キャリアアップ助成金は、アルバイトやパートなどの、非正規労働者を正社員化した場合に助成金がもらえる制度です。ここでは、最もニーズの高い「正社員化コース」を紹介していきます。
雇用保険の適用事業者であれば申請することができます。
概要は以下の通りです。
申請できる人 | 雇用保険の適用事業者 |
助成金額 | 28万5,000円~57万円 (中小企業・一人当たり) |
【飲食店のキャリアアップ助成金の活用事例】
飲食店のキャリアアップ助成金の活用事例を紹介いたします。
【洋食レストラン】
キャリアアップ助成金を活用し 「アルバイトを正社員化してモチベーションの向上・従業員の定着率をUP」
開業後はうれしいことに来店客も増え、順調に進んでいました。
開業当初は、人件費を抑えたいという理由からパートやアルバイトの従業員ばかり採用をしてきたが、従業員の定着率がわるく常に人手不足で、お店を閉めることもしばしば。
そこで、知り合いからキャリアアップ助成金の活用を提案され、現在働いているアルバイトの職員を正社員にし安定した雇用形態にすることでモチベーションの向上や退職を防止することができました。
また、新たなスタッフの募集時に正社員登用制度を記載することで、応募数も増加、入社する社員のモチベーションも高くなり、従業員の定着率も上昇する結果となりました。
1-6.番外編(自治体や民間の団体の実施する補助金)
これまでは、全国で公募が実施されている主な補助金を紹介してきましたが、その他にも、地方自治体や民間の団体が実施する補助金があります。
特に自治体の実施する補助金は、各地域の活性化を目的としており、地域の特色が表れているものもあり種類が豊富です。
見落としがちな補助金制度でもありますので、ご自身が事業を実施している地域で補助金の募集がないか、よく調べるようにしましょう。
自治体や民間の団体の実施する補助金の調べ方は次の3通りあります。
“補助金の調べ方”
- その1. ミラサポPlus 中小企業向け補助金・総合支援サイト
- その2.J-Net21 「支援情報ヘッドライン 補助金・助成金・融資」
- その3.各自治体のサイト
その1.ミラサポPlus 中小企業向け補助金・総合支援サイト
ミラサポplus 補助金・助成金 中小企業支援サイト mirasapo-plus.go.jp
中小企業庁が運営している中小企業、小規模事業者を対象とした情報支援サイトです。
トップページの「支援制度を探す」から、条件の絞り込みをクリックすると、事業ステージや困りごとなど、希望に合わせた補助金などの支援制度を検索することができます。
地域のタブからご自身の事業を行っている自治体を選択し 、この条件で検索をクリックすると、対象となる地域で実施している補助金や支援制度が一覧で見ることができます。
その2.J-Net21 「支援情報ヘッドライン 補助金・助成金・融資」
J-Net21 「支援情報ヘッドライン 補助金・助成金・融資」 https://j-net21.smrj.go.jp/snavi/support/
独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する中小企業を対象に支援を行うポータルサイトです。
全国の助成金・補助金・融資 の制度を地域や目的を指定して検索することができます。
「補助金・助成金・融資の検索」から、地域、種類、分野、フリーワードなどで検索をかけることができます。
その3.各自治体のサイト
各自治体のサイトを確認してみてください。
どの自治体のサイトにもトップ画面にサイト内検索バーがありますので、「補助金」と入力してみてください。
自治体のサイト内から補助金に関係するページが表示されます。
2.まとめ
今回は、飲食店が活用できる補助金・助成金を紹介しました。
ご自身の事業で使える補助金・助成金のイメージはつきましたでしょうか?
今回ご紹介した補助金の中でも、小規模事業者持続化補助金は対象となる経費の幅も広く使いやすい補助金ですので、初めての補助金申請におすすめです。
会社の規模や、事業状況、投資内容によって活用できる補助金も異なりますので、新しい事業を検討している、新しい設備投資を予定しているという方は、一度補助金の専門家に相談することをおすすめします。
あなたにぴったりの補助金を提案してくれます。
補助金を使うことでリスクを最小限に抑えた事業チャレンジが可能です。
是非、積極的に活用していきましょう。
各補助金について詳しく知りたい方は下記の記事を参考にしてみてください。
小規模事業者持続化補助金について詳しくはこちら
ものづくり補助金について詳しくはこちら
事業再構築補助金について詳しくはこちら
IT導入補助金について詳しくはこちら
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