IT導入補助金とは?自分は使える?何に使える?
補助金を活用したいけど、よくわからない!という方向けに、IT導入補助金についてわかりやすく解説していきます。
補助金の制度は複雑なものが多いですが、事業者様が理解しておくべきポイントに絞って解説していますので、
是非最後までお付き合いください。
1.IT導入補助金とは?
IT導入補助金とは、売上管理システムやECサイトの構築、顧客管理システムなどのITツールを導入する時にかかる費用の一部を国が補助してくれる制度です。中小企業、個人事業主を問わず利用することができます。
具体的にどのような制度なのか、事業者様が理解しておくべきポイントに絞って解説していきます。
1-1.補助対象経費(何が対象?)
具体的にどのようなITツールが補助の対象となるのでしょうか?
IT導入補助金の補助の対象となるITツールは、次の通りです。
業種別に対象となるITツールの例を紹介しています。
業種 | ITツール |
全業種共通 | ・財務会計ソフト ・スタッフ/給与管理システム ・自動化/効率化システム ・売上管理システム ・顧客管理システム ・福利厚生システム ・労務管理システム等 |
飲食業 | ・オーダーエントリーシステム ・在庫管理システム ・POSレジ会計システム ・Facebookやインスタグラム/Twitterなどの活動支援ツール ・予約受付システム ・外国人対応コミュニケーションシステム等 |
宿泊業 | ・在庫管理システム ・レシピ管理システム ・発注/仕入管理システム ・マーケティング分析システム ・外国人対応コミュニケーションシステム ・Facebookやインスタグラム/Twitterなどの活動支援ツール等 |
卸・小売業 | ・在庫管理システム ・マーケティング分析システム ・発注/仕入/買掛/支払管理システム ・ECサイト構築 ・Facebookやインスタグラム/Twitterなどの活動支援ツール ・採算管理システム ・流通管理システム ・お問い合わせ管理システム ・MD支援等 |
運輸業 | ・配車管理システム ・問い合わせ管理システム ・運賃計算ソフト ・採算管理システム ・運行管理システム ・商談管理システム等 |
医療 | ・カルテ管理システム ・予約管理システム ・窓口会計システム ・レセプト処理システム ・コミュニケーションシステム ・ワークフローシステム等 |
介護 | ・介護対象者管理システム ・ワークフローシステム ・在庫管理システム ・給食管理システム ・入居者情報管理システム ・社内コミュニケーションシステム等 |
保育 | ・生徒情報管理システム ・問い合わせ管理システム ・保育教育計画策定管理システム ・社内コミュニケーションシステム ・食育計画策定管理システム等 |
このように、さまざまなITツールを補助金を使って導入することが可能です。
これらのITツールの導入等に必要な費用の一部を補助してもらえることは経営者にとってはありがたいことですよね、是非活用したいところです。
ただし、補助金の対象となるITツ―ルは、補助金事務局が指定するIT導入支援事業者が提供するものに限られます。
1-2.対象者(誰が申請できる?)
IT導入補助金は、創業から1期以上経過している、中小企業・個人事業主が申請することができます。
一部の業種を除くほとんど業種が申請可能です。
対象となる中小企業及び、個人事業主の定義は次の表の通りです。
業種ごとに、資本金の金額や、従業員数によって対象の有無が判断されます。
【対象の中小企業等の定義】
業種 | 資本金 | 常時雇用する従業員数 |
製造業・建設業・運輸業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業(ソフトウエア業・情報処理サービス業・旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業(自動車または航空機用タイヤ及びチューブ製造業・工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
ソフトウエア業・情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
その他上記以外の業種 | 3億円 | 300人 |
医療法人・社会福祉法人・学校法人 | ー | 300人 |
商工会・都道府県商工会連合会・商工会議所 | ー | 100人 |
中小企業支援法第2条第1項第4号に規定される中小企業団体 | ー | 主たる業種に記載の従業員規模 |
特別の法律によって設立された組合またはその連合会 | ー | |
財団法人(一般・公益)・社団法人(一般・公益) | ー | |
特定非営利活動法人 | ー |
【小規模事業者の定義】
業種 | 常時雇用する従業員数 |
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) | 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業・その他 | 20人以下 |
ここでの従業員数は、「常時使用する従業員」のことで、原則すべての労働者を指します。
正社員の他、1年以上の継続が見込まれているパートやアルバイトも含みます。
ただし、役員や個人事業主本人、専従者は従業員に含まれません。
1-3.補助金額(いくらもらえる?)
IT導入補助金は、目的によって3つの枠に分類されます。
選択する枠よって、補助上限額と補助率、対象となる経費が異なってきます。
【IT導入補助金申請枠 一覧】
枠名 | 通常枠(A・B類型) |
目的 | 生産性の向上 |
補助率 | 2分の1以内 |
補助金額 | 最大450万円 |
対象経費(例) | ・自動化ソフト ・顧客管理システム ・売上管理ソフト ・販売支援ソフト ・会計ソフト ・給与計算ソフト ・労務ソフト ・在庫管理ソフトなどの購入費 ・クラウド利用料(最大2年分) ・導入関連費 |
枠名 | セキュリティ対策推進枠 |
目的 | サイバー攻撃などのリスクから守る |
補助率 | 2分の1以内 |
補助金額 | 最大100万円 |
対象経費(例) | 「サイバーセキュリティお助け隊」サービス利用料 |
枠名 | デジタル化基盤導入枠 |
目的 | 会計ソフト/受発注ソフト/決済ソフト/ECソフトの導入 +PCやタブレット等のハードウェア購入 |
補助率 | 4分の3以内または3分の2以内 (ハードウェアの購入は2分の1以内) |
補助金額 | 最大350万円 +ハードウェア購入費最大20万円 |
対象経費(例) | ・会計ソフト/受発注ソフト/決済ソフト/ECソフトの購入費 |
それぞれ詳しく解説していきます。
①通常枠(A・B類型)
通常枠は、生産性の向上を目的としたITツールの導入をする場合に利用できる枠です。
具体的には作業効率を上げるための自動化ソフトや、顧客・売上管理、販売支援、会計や労務、給与、スタッフ管理などのシステムの購入費とその導入費の2分の1、最大450万円を補助してもらうことができます。
業務の効率化や売上アップが期待できます。
導入するソフトウェアが担う業務プロセス数により、補助上限金額が異なります。
【通常枠の補助上限・補助率・補助対象経費】
A類型 | B類型 | |
補助金額 | 5万~150万円未満 | 150万~450万円以下 |
補助率 | 2分の1以内 | 2分の1以内 |
必要な業務プロセス数 | 1つ以上 | 4つ以上 |
補助対象経費 | ・作業効率を上げるための自動化ソフト ・顧客管理システム ・売上管理ソフト ・販売支援ソフト ・会計ソフト ・給与計算ソフト ・労務ソフト ・在庫管理ソフトなどの購入費 ・クラウド利用料(最大2年分) ・導入関連費 |
②セキュリティ対策推進枠
セキュリティ対策推進枠は、サイバー攻撃などのリスクから守ることを目的としたセキュリティソフトを導入する場合に利用できる枠です。補助の対象が「サイバーセキュリティお助け隊」というセキュリティ対策関連のサービスに特化しています。
【セキュリティ対策推進枠の補助上限・補助率・補助対象経費】
補助金額 | 最大100万円 |
補助率 | 2分の1以内 |
補助対象経費 | 「サイバーセキュリティお助け隊」サービス利用料(最大2年分) |
③デジタル化基盤導入枠
デジタル化基盤導入枠は、会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトの導入を目的とした枠で、補助率は4分の3、または3分の2、と通常枠よりも高くなっており、最大350万円の補助が受けられます。
併せて、PCやタブレット等のハードウェア購入費も最大20万円が補助の対象となります。
ただし、デジタル化基盤導入枠は対象経費に対する補助率や補助額など要件が複雑なため専門家とよく相談して進めましょう。
導入するソフトウェアの機能数に応じて、補助率等が異なります。
【デジタル化基盤導入枠の補助上限・補助率・補助対象経費】
≪ソフトウェア購入費≫ | 「会計・受発注・決済・EC」のうち機能が1つ以上の場合 | 「会計・受発注・決済・EC」のうち機能が2つ以上の場合 |
補助金額 | 最大350万円 | |
補助率 | 4分の3以内 | 3分の2以内 |
補助対象経費 | ・会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトの購入費 |
+
≪ハードウェア購入費≫ | ||
補助金額 | 最大10万円 | 最大20万円 |
補助率 | 2分の1以内 | 2分の1以内 |
補助対象経費 | ・PC ・タブレット ・プリンター ・スキャナー ・複合機 | ・レジ ・券売機 |
1-4.難易度(補助金の採択率は?)
補助金は、必ずもらえるものではありません。
事業計画書を作成し、厳しい審査をクリアする必要があります。
審査を通過した事業者の割合を採択率と言い、各公募回や枠ごとに採択率が発表されています。
過去のIT導入補助金の採択率は下記の通りです。
【IT導入補助金2022年採択率】
締切 | 通常枠(A類型) | 通常枠(B類型) | セキュリティ対策推進枠 | デジタル化基盤導入類型 |
1次 | 55.6% | 41.3% | 100.0% | 87.1% |
2次 | 55.1% | 42.7% | 95.0% | 88.3% |
3次 | 49.2% | 41.3% | 96.5% | 85.9% |
4次 | 43.8% | 44.9% | 100.0% | 87.0% |
5次 | 61.1% | 60.4% | 95.5% | 83.1% |
6次 | 65.0% | 59.3% | 95.8% | 82.4% |
7次 | 70.0% | 62.2% | 95.7% | 81.9% |
8次 | 67.3% | 64.3% | ――― | 86.1% |
9次 | 68.5% | 62.7% | ――― | 78.6% |
10次 | ――― | ――― | ――― | 77.9% |
11次 | ――― | ――― | ――― | 79.7% |
12次 | ――― | ――― | ――― | 82.0% |
13次 | ――― | ――― | ――― | 78.3% |
14次 | ――― | ――― | ――― | 80.9% |
15次 | ――― | ――― | ――― | 83.7% |
16次 | ――― | ――― | ――― | 82.0% |
17次 | ――― | ――― | ――― | 82.4% |
18次 | ――― | ――― | ――― | 85.6% |
19次 | ――― | ――― | ――― | 77.4% |
導入支援事業 交付決定.「申請件数及び交付決定件数」.https://www.it-hojo.jp/past-it/r3-it/,(参照2023/4/18)
IT導入補助金の申請は、IT導入支援事業者の支援のもと補助金の申請を行います。
ITツールに詳しくない方でも、ITツールの専門家の知識やノウハウを取り入れることができるため、安心して申請をすることができます。
2.補助金申請の流れ
IT導入補助金はどの枠も期日までに申請を行う必要があります。
補助金を申請するためには、いくつかの作業工程があります。
時間も指定されていますが、アクセスが集中した場合は申請できなかった、という場合も考えられますので、各種申請・提出は余裕をもって行いましょう。
申請の流れは以下の通りです。
①ITツールをIT導入支援事業者の選定
▽
②gBizIDプライムアカウントの取得
▽
③「SECURITY ACTION」の宣言
▽
④「みらデジ」の「経営チェック」
▽
⑤書類作成
▽
⑥交付申請
▽
⑦採択・交付決定
▽
⑧事業実施
▽
⑨事業実施報告
▽
⑩補助金交付手続き
①ITツールをIT導入支援事業者の選定
交付申請を行う前に自社の業種や事業形態、解決するべき課題に沿って導入したいITツールをIT導入支援事業者と共に選定します。
IT導入支援事業者とはITツールを導入する際に、その導入を支援する業者のことを言います。
お近くのよろず支援拠点や、商工会、商工会議所に経営の課題を解決するITツールの相談をしてみましょう。
IT導入支援事業者の紹介を受けることができます。
https://www.it-hojo.jp/applicant/vendorlist.html
IT分野に精通していない人が、ITツールの説明を入れながら事業計画書を作成するのは非常に困難です。
ITの専門家である、IT導入支援事業者の支援を受けることができるため、IT分野に詳しくない人でも支援事業者のノウハウを受けながらITツールの選定、事業計画書の作成をすることができます。
補助金を申請するために、IT導入支援事業者との打ち合わせが必要になります。
時間に余裕をもって取り組むようにしましょう。
②gBizIDプライムアカウントの取得
IT導入補助金の申請は、電子申請です。
電子申請を行うために必要な、gBizIDプライムアカウントの取得が必須です。
gBizIDプライムアカウントは、発行までに2週間程度かかるため、早めの行動をおすすめします。
gBizIDプライムアカウントについて詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
③「SECURITY ACTION」の宣言
IT導入補助金を申請するためには、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の宣言が必要となります。
「SECURITY ACTION」の宣言とは、中小企業・小規模事業者等自らが、情報セキュリティ対策に取り組むことを 自己宣言する制度です。
事前に、アカウントIDを取得し、交付申請時にアカウントIDの入力が必要になります。
「SECURITY ACTION」について詳しくは、下記のURLを参照してください。
https://www.ipa.go.jp/security/security-action/it-hojo.html
④「みらデジ」の「経営チェック」
「みらデジ」とは、中小企業庁が実施する中小企業・小規模事業者等の経営課題をデジタル化により解決することをサポートする制度のことです。
IT導入補助金を申請するためには、「みらデジ」ポータルサイト内に、事前に取得したgBizIDで連携登録し、「経営チェック」を実施する必要があります。
いくつかの設問に回答し、同地域・同業種の他社と比較した自社の系家課題やデジタル化の進捗状況を知ることができるツールです。
詳しくは、「みらデジ」公式ホームページを参照してください。
https://www.miradigi.go.jp/
⑤書類作成
IT導入補助金の申請のために必要な書類の作成をIT導入支援事業者とともに行います。
交付申請には以下の書類の提出が必要になります。
【必要書類一覧】
事業形態 | 必要書類 |
全ての事業主 | ・事業計画書(IT導入支援事業者と共に作成を行います。 |
法人の場合 | ・履歴事項全部証明書 ・法人税の納税証明書 |
個人事業主の場合 | ・運転免許証または運転経歴証明書または住民票 ・所得税の納税証明書 ・確定申告書 |
⑥交付申請
IT導入補助金の交付申請は、電子申請です。
IT導入支援事業者から「申請マイページ」の承知を受け、会社の基本情報、財務情報、経営情報、導入するITツール等必要な情報を入力し、事業計画書等の書類の添付を行います。
交付申請後は、審査期間となります。審査の期間は、申請締め切り日からおおよそ1カ月程度です。
⑦採択・交付決定
約1カ月の審査期間を経て、事務局から交付の決定の通知を受けます。
採択結果は、メールにて通知されます。
交付決定の連絡より前に、発注・契約・支払い等を行った場合、補助金を受け取ることができません。
⑧補助事業の実施
交付決定からおおよそ半年間が、事業の実施期間となります。
この半年の間に実際にITツールを導入し、新たな事業に取り組みます。
⑨事業実施報告
補助事業の完了後、実際に購入したITツールがわかるような見積書・契約書・請求書・納品書や支払ったことがわかる証明書の提出を行います。
⑩補助金交付手続き
事業実施報告後、補助金額が確定しようやく補助金が入金されます。
以上が、補助金の申請から入金までの流れです。
3.まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回はIT導入補助金について、事業者が理解しておくべきポイントに絞って解説してきました。
そのため、詳しい要件などは、専門家に問い合わせるようにしてください。
IT導入補助金は、ITツールを使った生産性の向上やセキュリティ対策の取り組みを補助する制度です。
作業効率を上げるための自動化ソフトや、顧客・売上管理ソフト、販売支援ソフト、会計や労務、給与、スタッフ管理ソフトなど、様々なITツールを導入することで、生産性の向上や時間短縮、コスト削減などの効果が期待できます。
「ITには詳しくない」「ITにはまだまだ苦手意識がある」という方も、ITの専門家である、「IT導入支援業者」と一緒に導入するツールを選んだり、補助金の申請をしていくため安心です。
まずは、自社の抱える課題を洗いだし、ITツールを導入することで解決できないか検討してみましょう。
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