「設備資金で借りた融資金を運転資金に使ってもいいのだろうか?」
「想定より安く設備が導入できることになり設備資金で借りた融資金が余った。仕入れのために使ってもいい?」
これらは、資金使途違反になるため、絶対に行ってはいけません。
資金使途違反は、会社の信用を失墜する、重大な違反行為です。
最悪、倒産に陥ることも。
悪意を持った資金使途はもちろんアウトですが、知らず知らずのうちに悪意なく資金使途違反をしてしまっているケースもあります。
そこで今回は、資金使途をしてしまった場合どのような影響があるのかや、資金使途違反とみなされてしまうよくある事例を解説していきます。
目次
1.資金使途違反とは?
資金使途違反とは、融資の申込時に申告した目的と異なる用途に融資金を使用することを指します。
例えば、設備の購入のために借りたお金を、設備を購入せずに、仕入れや人件費の支払い等の運転資金として使ってしまったり、悪質な場合、社長のプライベートに流用したり、株を購入したりといったケースがあります。
銀行は、事業の遂行のために設備が必要と言ったから、融資をしてるのです。
当然、銀行からすれば約束を破られたわけですから「資金使途違反」として厳しい対応をします。
たとえ、悪気がなかったとしても「資金使途違反」とみなされると最悪の場合、一括返済を求められることがあります。
もし、あなたが家族から「お金を貸して欲しい」と言われたら、まずは「何に使うの?」と聞きますよね。
そのお金の利用目的が「資格取得のための通学費用」と言われていたはずなのに、実際は遊びやギャンブルに使われていたとしたら、当然怒りますし、お金を早く返してくれと言いますよね。
そして、もう二度とお金を貸したくないと思いますよね。
銀行も、考えは同じです。
次の章では、「資金使途違反」をした場合、どのようなことが起こるのかを解説していきます。
2.資金使途違反をするとどうなるのか
資金使途違反をすると次のようなペナルティを受けます。
最悪の場合、「倒産」に直結します。絶対に資金使途違反はしないようにしてください。
2-1.融資金の一括返済
融資金の一括返済を求められるケースがあります。
お金が必要だから融資を受けているはずです。おそらく融資金はすぐに使ってしまっていることでしょう。
既に使ってしまったお金を、一括返済となれば相当厳しい状況に陥るのは言うまでもありません。
2-2.新たな融資が受けられなくなる
銀行からの信用を失い、新たな融資が受けられなくなります。
一度失った信用を取り返すことは簡単ではありません。
では、銀行を変えれば融資は受けられるのでしょうか?
資金使途違反とみなされた融資が、プロパー融資なら銀行を変えれば融資を受けられる可能性があります。
しかし、資金使途違反とみなされた融資が保証協会付き融資の場合、銀行を変えても融資を受けられない可能性が高くなります。
保証協会付き融資の資金使途違反をした場合、保証協会も資金使違反の事実を認識し、履歴として残しています。そのため銀行を変えたとしても、保証協会付き融資の場合、資金使途違反の事実は共有され結果として融資が受けにくくなるのです。
3.資金使途違反はなぜバレる?いつバレる?
では、資金使途違反はなぜバレてしまうのでしょうか?
資金使途違反は、すぐにバレるケースと時間が経過してからバレるケースがあります。
もし、知り合いの社長から「うちは何も言われていないし大丈夫だよ」なんて聞いていてもいずれ悪事はバレるものですので、口車にのせられないよう注意しましょう。
資金使途違反がバレる理由①支払い・領収書でバレる
銀行融資の場合は、融資申込時の見積書、請求書の通りに支払いが行われていることを領収書の提出によって確認をします。
よって、融資申込時の予定通りに資金が使われていないと、融資直後に資金使途違反がバレることになります。
一方、日本政策金融公庫の場合は、領収書の提出までを求めるケースは少なく、資金使途違反をしていても融資直後にはスルーされてしまうケースがほとんどです。
ですが、今現在は、バレていないだけでいずれバレるものです。
資金使途違反がバレる理由②次の融資を受ける時にバレる
融資を受けて時間が経過してから、資金使途違反がバレるケースです。
数年後に新たに融資を受けようとした際に、決算書類の内容から資金使途違反がバレたり、前回の融資について問合せが入り、領収書などの提出が求められそこで資金使途違反が発覚します。
分かりやすいケースで言えば、設備資金として融資を受けたのに、実際は設備を購入せずに運転資金に使ってしまった場合、固定資産台帳に資産の計上がないため、バレます。
決算書類からは様々なことが読み取れます。
プロが見れば悪いことをしていることは簡単に見抜かれてしまいます。
4.知らないうちに「資金使途違反!?」よくある事例
もちろん悪意のある資金使途違反はNGですが、そういったつもりがなくても資金使途違反になってしまうケースもあるため注意が必要です。
よくある資金使途違反の事例を紹介していきます。
事例①先に設備等を購入してしまった。
融資金の入金前に、設備等の購入代金を支払ってしまったケースです。
設備等の購入は、必ず融資金が口座に入金されてから、その資金で支払いを行ってください。
融資の審査が通ったという連絡もらったことに安心して、融資金の入金前に口座にあった預金から支払いを行ってまうと資金使途違反になります。
頭金など支払いの一部を先に支払うことも同様に資金使途違反になりますので注意してください。
あとからお金が入金されるからと、悪気なく資金使途違反をしてしまうよくある事例です。
事例②設備の購入が見積より安く済んだので余った資金を運転資金にした。
設備の購入費用が、値引きなどにより見積より安く済み、余った資金を運転資金など他の目的に使用してしまったケースです。
これも立派な資金使途違反になります。
融資申込時の見積もりより安く済むことが分かった時点で、銀行の担当者に相談をしてください。
融資の実行後の場合、差額の程度にもよりますが一般的には余った分は一括返済が求められます。
事例③貸借対照表の役員貸付金から資金使途違反が発覚
運転資金で融資を受けた場合によくある資金使途違反とみなされてしまうケースです。
会社の諸経費の支払いのために借りた資金は、当然会社の諸経費の支払いに使われないといけません。
融資金を社長個人へ貸付をすると当然、資金使途違反になります。
設備資金の資金使途違反の場合、領収書や現物の確認で一目瞭然ですが、運転資金の資金使途違反は、決算書の貸借対照表の役員貸付金の科目から発覚します。
融資を受けた後の決算書の貸借対照表の役員貸付が増えていると、融資金の一部を社長個人へ貸しているとして資金使途違反とみなされてしまうことがあります。
運転資金の融資金を、そのまま社長個人へ貸したという自覚がなくとも、事業を行っていく中で役員貸付金が増えてしまっていると、結果的に融資金が社長個人へ流れて行ったとみられてしまうため注意が必要です。
金融機関の担当者から、必ず会社にお金を戻すように言われる事例です。
解消しないと次の融資を受けることは、まず難しいでしょう。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか?
資金使途違反は絶対にしてはいけません。
資金使途違反が発覚すると融資金の一括返済を求められたり、次回以降、新たな融資が受けられなくなる恐れがあります。
ですが、実際に「そう簡単にはバレないだろう。」「知り合いが、やっていて今もバレていないし大丈夫。」などと考えている経営者は多くいます。
実際に、バレていないケースもあるでしょう。
しかし、いずれ悪事はバレるもの。
その代償は、最悪会社の倒産にも直結する恐ろしいものです。
大切な会社や従業員、自分自身を守るためにも資金使途違反は絶対にしないようにしましょう。
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