資金調達の代表的な方法「出資」と「融資」。
この二つの違いを理解していますか?
「出資」は、投資家などにお金を出してもらう代わりに、企業の株を渡すことになります。
資金の返済の義務はありませんが、出資者は経営について影響力を持つことになります。
また、企業の成長に応じて配当金を支払う必要がでてきます。
一方「融資」は、銀行や金融機関からお金を借りることです。
返済の義務があることと、利息を支払う必要があります。
本記事では、「出資」と「融資」の違いを深く掘り下げて、出資を受ける方法や、融資を受ける方法まで徹底解説していきます。
あなたにとっての最適な方法を、一緒に考えていきましょう。
目次
1.出資と融資の違い
出資と融資の違いは以下の通りです。
出資 | 融資 | |
資金提供者 | エンジェル投資家 ベンチャーキャピタル | 金融機関 |
資金提供者の目的 | 企業の成長によって得られる利益 | 貸したお金に対して利息を得ること |
返済義務 | なし | あり |
資金提供者が重視すること | 企業の成長性 | 返済の確実性 |
対象となる企業の特徴 | 革新的なビジネスモデルや技術を持ち、将来的に大きな市場を狙えるポテンシャルの高いスタートアップ企業や新興企業 | 業績が安定している企業や、収益モデルが明確で持続可能なビジネスを展開している企業 |
担保・保証人 | なし | 原則あり |
経営への関与 | あり | なし |
金額の相場 | 投資家の判断や事業の将来性に応じて大きく変わる。 | 中小企業の場合、数百万円~数千万円にとどまるケースが多い |
難易度 | 高い | 工夫次第で成功確率を高めることができる |
それぞれ詳しく解説していきます。
1-1.資金提供者
①「出資」の場合の資金提供者
出資の資金提供者は、主にエンジェル投資家やベンチャーキャピタルです。
エンジェル投資家は創業して間もない起業家にお金を出資してくれる個人投資家です。
ベンチャーキャピタルは成長が期待される企業やスタートアップに出資する専門の投資会社です。
②「融資」の場合の資金提供者
融資の資金提供者は、銀行や信用金庫、日本政策金融公庫などの金融機関です。
1-2.資金提供者の目的
①「出資」の場合の資金提供者の目的
出資は、企業の成長によって得られる利益を期待するものです。
資金の提供と引き換えに出資者は企業の株式を保有します。
株式を持っている間は、配当金を受け取ることで利益を得ることが期待できます。
また、企業が成長し株式の価値が上がったときに、その株式を売却して利益を得ることも出資の目的の一つです。
エンジェル投資家やベンチャーキャピタルはリスクをとりつつ、大きなリターンを狙っています。
②「融資」の場合の資金提供者の目的
融資は、貸したお金に対して利息を得ることを目的としています。
つまり、金融機関はリスクを最小限に抑え、確実な返済を重視します。
したがって、確実な返済が見込める企業に対して融資を行います。
1-3.返済義務
①「出資」の場合の返済義務
出資の場合、原則返済の義務はありません。
そのため、返済のプレッシャーがなく、利益を出すことに集中することができ、思い切ったチャレンジも可能となります。
②「融資」の場合の返済義務
融資の場合、原則返済の義務があります。
そのため、まずは返済原資を確保し確実に返済できるような安定した収益を上げる必要があります。
1-4.資金提供者が重視すること
①「出資」の場合の資金提供者が重視すること
出資の場合、出資先企業の成長性を重視します。
革新的なビジネスモデルや技術を持つ企業に出資することで、大きなリターンを期待しています。
つまり、成長性が高く、将来的に大きな市場を狙える企業が注目されます。
②「融資」の場合の資金提供者が重視すること
融資の場合は、いかに確実に返済が行えるかを重視しています。
そのため、業績が安定している企業や明確な収益モデルを持つ企業が対象となります。
1-5.対象となる企業の特徴
①「出資」の場合の対象となる企業の特徴
出資の場合、革新的なビジネスモデルや技術を持ち、将来的に大きな市場を狙えるポテンシャルの高いスタートアップ企業や新興企業が対象となるケースがほとんどです。
これは、資金提供者であるエンジェル投資やベンチャーキャピタルが高いリターンを期待しているためです。
特に新しい市場や技術に関連する企業は、急成長することが多く、出資した起業が成功すれば、出資額に対して大きなリターンが得られる可能性があります。
②「融資」の場合の対象となる企業の特徴
融資の場合、業績が安定している企業や、収益モデルが明確で持続可能なビジネスを展開している企業が対象となるケースが多いです。
これは、資金提供者である金融機関が、確実な返済を求めているためです。
1-6.担保・保証人
①「出資」の場合の担保・保証人
出資では、担保や保証人は必要ありません。
その代わり、リターンが得られないリスクを出資者が負います。
②「融資」の場合の担保・保証人
融資では原則、担保や保証人が求められます。
返済が滞った時に貸し倒れのリスクを軽減するためです。
ただし、日本政策金融公庫の創業融資は担保や保証人なしで受けることができます。
1-7.経営への関与
①「出資」の場合の経営への関与
出資者は、資金を提供する代わりに、企業の株式を保有するため、会社の経営に関与することになります。
資金を提供するエンジェル投資家などは、これまでさまざまな企業に投資してきた豊富な経験を持っていることが多く、経営に関する有益なアドバイスを受けられることもあります。
一方で、経営の自由度が低下する恐れもあります。
②「融資」の場合の経営への関与
経営に影響はありません。
経営の自由度は保たれますが、返済義務が常に重くのしかかることになります。
1-8.金額の相場
①「出資」の場合の金額の相場
出資額は、投資家の判断や事業の将来性に応じて大きく変わります。
スタートアップ企業では数百万から数千万が一般的です。
大きな成長が期待できる企業の場合、数千万額~数億円など非常に大きな金額になることもあります。
成長が見込まれるほど、より大きな出資を受けやすくなります。
②「融資」の場合の金額の相場
融資額は、事業計画や事業の将来性などに基づいて決まります。
中小企業の場合、数百万円~数千万円にとどまるケースがほとんどです。
信用力の高い企業であれば数億円単位の資金調達も可能です。
1-9.難易度
①「出資」の場合の難易度
出資は、難易度が高いと言えます。
なぜなら、企業の成長ポテンシャルやビジネスモデルの魅力に大きく依存するためです。
革新的なビジネスモデルや技術があれば、比較的受けやすいですが、競争が激しいため、投資家の目に留まることが重要です。
②「融資」の場合の難易度
融資は、決して難易度が低いという訳ではありませんが、信用力が高く、安定した収益があれば、融資が受けられる可能性は非常に高くなります。
工夫次第で、融資の成功率を高めることも可能であるため、まず初めに検討したい資金調達方法です。
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2.出資と融資のメリット・デメリット
次に、出資と融資を受ける側のそれぞれのメリット・デメリットを解説していきます。
2-1.出資のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
①返済・利息の支払いの必要がない ②多額の資金を調達できる可能性がある ③経営のサポートが受けられる | ①経営の自由度が下がる ②成長へのプレッシャーがかかる ③出資を受ける難易度が高い |
2-1-1.出資のメリット
①返済・利息の支払いの必要がない
お金を借りているわけではないので、返済や利息の支払いは必要ありません。
そのため、事業活動で得た収益を事業拡大や成長に全額活用でき、事業の成長スピートが早まります。
②多額の資金を調達できる可能性がある
融資に比べて、多額な資金を調達できる可能性があります。
特に成長が期待される企業に対しては数千万〜数億円といった大規模な資金を調達できる可能性があります。
③経営のサポートが受けられる
出資者は単に資金を提供するだけでなく、経営経験やネットワークを活用して企業の成長を支援することが多いです。特に、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルはアドバイザーとしての役割も果たし、事業戦略や拡大のサポートを提供してくれることがあります。
2-1-2.出資のデメリット
①経営の自由度が下がる
出資者は、資金を提供する代わりに、企業の株式を保有するため、会社の経営に関与することになります。
資金の使途や経営方針に制約が設けられることがあります。
これが企業の自由な成長を妨げる可能性もあります。
自由な経営をしたいと考える方は、出資ではんく融資を選ぶ方が良いでしょう。
②成長へのプレッシャーがかかる
出資者は短期的な成長や高いリターンを期待するため、その期待に応えなければならないというプレッシャーがかかります。
③出資を受ける難易度が高い
出資を受けるには、厳しい審査基準や激しい競争を勝ち抜く必要があります。
さらに、出資者の投資分野や地域の好みに合わない場合、資金調達が困難になることもあります。
2-2.融資のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
①自由に経営できる ②資金調達がしやすい | ①返済・利息の支払い義務がある ②資金の使い道が限定される ③原則、担保や保証人が必要 ④返済能力によって調達できる金額が決まる |
2-2-1.融資のメリット
①自由に経営できる
融資は、ただ金融機関からお金を借りるだけであり、出資のように、株式を提供するわけではないので経営に口を出されることはありません。
②資金調達がしやすい
融資は身近な銀行や信用金庫などの金融機関の窓口から申込ができ、信用力や事業計画がしっかりしていれば、出資に比べ資金調達がしやすいです。
また、どの金融機関も申込から1か月~1か月半程度で融資の実行まで向かえるため、スケジュールも立てやすくなります。
出資の場合、投資家やベンチャーキャピタルを見つけること自体が難しいため、事業計画が立てにくくなります。
2-2-2.融資のデメリット
①返済・利息の支払い義務がある
返済および利息の支払い義務があります。
そのため、返済原資を確保し確実に返済できるような安定した収益を上げなければなりません。
②資金の使い道が限定される
融資の場合は、事前に資金の使い道を申告します。
申告した使い道以外で資金を使うことはできません。
③原則、担保や保証人が必要
原則、担保や保証人を差し出す必要があります。
ただし、担保や保証人なしで受けることができる制度も存在します。
④返済能力によって調達できる金額が決まる
返済能力によって調達できる金額が決まるため、必要な金額全て調達できるとは限りません。
2-3.結局のところ出資と融資のどちらにするべき?
まずは、融資を受けることから検討しましょう。
融資は身近な銀行や信用金庫などの金融機関の窓口から申込ができ、信用力や事業計画がしっかりしていれば比較的簡単に利用できます。
一方、出資は投資家やベンチャーキャピタルを見つけること自体が難しく、特に厳しい審査や競争を通過しなければなりません。
出資者を探し出すことが大変で、さらに出資を受けるためのハードルも高いため、融資の方が現実的で手軽な資金調達手段と言えるためです。
一方で、革新的なビジネスモデルや技術があり、多額の資金を集めたいという場合は、出資にチャレンジしてみましょう。
良い投資家に出会うことが出来れば、返済の必要のない多くの資金が調達でき、事業の成長スピードも格段に速くなるでしょう。
ただし、出資を受けるということは、投資家が経営への参加することになりますので、自由な経営をしたいと考えている場合は、融資を選択するのも一つの選択肢と言えます。
3.出資・融資を受ける方法
では実際に、出資や融資を受けるにはどのような手続きが必要なのでしょうか?
出資を受ける方法と融資を受ける方法についてそれぞれ解説していきます。
3-1.出資を受ける方法
出資を受ける際の具体的な流れは以下の通りです。
詳しく説明していきます。
3-1-1.出資してもらえるよう事業の魅力を上げる
まずは投資家に出資したいと思ってもらわないといけません。
そのためには具体的で魅力的なビジネスプランを作成することが重要です。
ビジネスプランには、目標や収益の予測、成長戦略を含めて、事業の将来性を具体的に記載します。
また、投資家が理解しやすいように、競合と比較した際の自社の優位性を示すデータやグラフを用意しておくと、事業の魅力はさらに高まります。
ビジネスプランの発案に役立つフレームワークに「ビジネスモデルキャンパス」と言うものがあります。
ビジネスの設計図となりますので是非参考にしてみてください。
ビジネスモデルキャンパスについて詳しくはこちら
▶ビジネスモデルキャンバスとは?基本事項から作成手順までを徹底解説
3-1-2.投資家にアプローチする
マッチングサイトやSNSやメルマガで直接連絡する方法や、起業家交流会やビジネスイベントに参加する方法、知人に紹介してもらうなどがあります。
直接コミュニケーションをとることで、マッチングが実現しやすくなります。
マッチングサイトはいろいろな種類があるので、自分に合うサイトを探してみましょう。
【マッチングサイトの一例】
Startup List
ANGEL PORT
3-1-3.ビジネスモデル・事業計画のプレゼンテーション
エンジェル投資家やベンチャーキャピタルへ、ビジネスモデルや事業計画のプレゼンテーションを行います。
3-1-4.審査
エンジェル投資家やベンチャーキャピタルによって、企業の将来性、ビジネスモデル、財務状況などを詳しく調査、審査を行います。
3-1-5.条件交渉
出資条件について話し合い、出資金額、持ち株比率、配当などの合意を形成します。
3-1-6.契約の締結
出資条件について合意が成立したら、正式な契約を締結し出資を受け取ります。
3-1-7.フォローアップ
出資後も、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルと定期的にコミュニケーションを取り、進捗報告やアドバイスを受けながらビジネスを成長させます。
以上が出資を受ける際の具体的な流れです。
3-2.融資を受ける方法
融資を受ける際の具体的な流れは以下の通りです。
詳しく説明していきます。
3-2-1. 事前準備
融資を受けるために、必要な資金の額や用途を明確にします。
また、事業計画書を作り込んでおくことで、融資の成功確率は大幅にアップします。
融資の成功確率を高める事業計画書の作成方法について詳しくはこちら
▶はじめてでも、事業計画書がつくれる!実践型の事業計画書の書き方と手順を専門家が解説します!
また、専門家にサポートを依頼することもおすすめです。
融資成功のノウハウや、金融機関との交渉術を伝授してくれます。
3-2-2. 金融機関の選定
事業のステージに応じた金融機関を選びましょう。
創業時や、初めての融資は日本政策金融公庫がおすすめです。
日本政策金融公庫は、創業者や中小企業向けに低金利で融資を提供してくれる政府系金融機関で、地方銀行や信用金庫の業務を補完するのを目的としています。
そのため、創業融資など信用力の低い事業者にも対しても積極的に対応してくれます。
初めて民間の金融機関(銀行や信用金庫)から融資を受けたいと考えている場合は、信用金庫や信用組合がおすすめです。
地域密着で相談しやすく、経営に関するアドバイスも受ける事ができ、創業融資や中小企業への融資も積極的に行っています。
3-2-3. 申込
選定した金融機関に融資の申し込みを行います。
申込時に必要な書類は、金融機関や事業内容、申請者の属性などによって異なります。
事前に確認するようにしましょう。
一般的な融資の必要書類は以下の通りです。
【必要書類】
・借入申込書
・事業計画書(創業計画書)
・設備や工事等の見積書(融資の資金使途がわかるもの)
・不動産の賃貸借契約書または物件の説明書
・許認可や資格を証明するもの
・預金通帳
・代表者の本人確認書類(免許証等)
・履歴事項全部証明書(登記簿謄本)、定款※法人の場合
・借入金の返済予定表(法人のもの、代表者個人のもの)
・直近3期分の決算書または確定申告書(既に事業を行っている場合)
3-2-4. 面談
金融機関の担当者と面談を行い、事業について詳しく説明します。
面談では、事業計画についてはもちろん、経営者としての人となりや、信頼性などが見られています。
また、融資金の具体的な使い道が明確であることも求められます。
これらの要素が総合的に融資の判断材料となります。
3-2-5. 審査
面談から2週間程、審査の期間が設けられます。
事前に提出した書類や、面談の内容の他、事業の実態を調査するために金融機関の担当者による現地調査などがおこなわれます。
現地調査の際に、対応する必要は基本的にありません。
3-2-6. 審査結果の通知
審査が終了すると、金融機関から審査結果が通知されます。電話での通知になるケースがほとんどです。
3-2-7. 契約の締結
正式な契約を締結します。
3-2-8. 融資実行
契約が完了すると、指定した口座に融資金が振り込まれます。
3-2-9. 返済開始
融資金の受け取り後、設定された返済スケジュールに従って、元本と利息の返済を開始します。
以上が融資を受ける際の具体的な流れです。
身近な人に出資をしてもらったり、お金を貸してもらうケースもあるでしょう。
身近な家族や友人の場合でも、口約束ではなく必ず契約書を作成するようにしてください。
身近な人から、お金をもらう場合は、会社として出資を受けるのではなく、社長が個人としてお金をもらう、贈与とするケースがほとんどです。
その場合は、必ず贈与契約書を締結するようにしましょう。
ただし、受け取った金額が年間110万円を超える場合、その超えた部分に贈与税が課税されます。
一方、身近な人からお金を借りる場合は、金銭消費貸借契約を作成しましょう。
契約書による証拠を残しておかないと「借入」ではなく「贈与」とみなされ、多額の贈与税が課せられる可能性があります。
たとえ身近な人であっても金銭消費貸借契約書を作成したり、返済を銀行振込で行うなど、「借入」である証拠や記録を残しておく必要があります。
親族など身近な人から借入をする際の注意点や、金銭消費貸借契約の作成方法について詳しくはこちらの記事を参照してください。
▶【開業資金】親族からの借入を考えているあなたへ!税理士が教える2つの注意点
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。
本記事では、出資と融資の違いを深く掘り下げて解説をしました。
もし、あなたの企業が革新的なビジネスモデルや技術を持ち合わせているのであれば、返済不要の出資による資金調達にチャレンジする価値は十分あるでしょう。
しかし、そのチャンスをものにできる企業は、ほんの一握りかもしれません。
より、着実に資金調達をしたいのであれば、融資を受けることを選択しましょう。
決して融資を受けることは簡単ではありませんが、しっかりとした事業計画によって返済の確実性を証明することが出来れば、誰でも融資を受けるチャンスがあると言えます。
是非、自分にあった資金調達方法を検討し、チャレンジしてみてください。
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